イスラエル主要人権団体が「ガザでジェノサイド」と初断定:国際社会への影響と国内の懸念

イスラエルの主要な人権団体であるベツェレムとイスラエル人権医師会(PHRI)が、パレスチナ自治区ガザ地区の現状を巡り、イスラエルがガザのパレスチナ人に対して「ジェノサイド(集団殺害)を犯した」と非難する声明を発表しました。イスラエルの人権団体が自国の行為をジェノサイドと断定するのは、これが初めてのことであり、国際社会および国内に大きな波紋を広げています。

イスラエル軍の攻撃により破壊されたパレスチナ自治区ガザ地区北部の建物と瓦礫イスラエル軍の攻撃により破壊されたパレスチナ自治区ガザ地区北部の建物と瓦礫

ベツェレムとPHRIによる「ジェノサイド」認定の根拠

ベツェレムは、28日に公表した79ページにわたる報告書の中で、ガザ地区におけるイスラエルの政策、その甚大な結果、そしてイスラエル政府高官や軍司令官による攻撃に関する発言を詳細に検証した結果、「ジェノサイド」と断定するに至ったと述べています。同団体は、イスラエルがガザ地区で、直接的な攻撃や壊滅的な生活状況への陥れによる集団殺害、大規模なインフラ破壊、社会構造の崩壊、大量逮捕と拘束された人々への虐待、そして民族浄化の試みを含む集団避難の強要を行っていると指摘。さらに、イスラエル高官が今回の紛争を通じて「ジェノサイドの意図を表明している」と強調しています。

これに呼応し、イスラエル人権医師会(PHRI)もベツェレムの認定に加わると発表。PHRIは独自の法的・医学的な検証を通じて、「ガザの医療システムを意図的かつ組織的に殲滅(せんめつ)させる」行為があったと結論付け、「これは戦争の巻き添え被害ではなく、集団としてのパレスチナ人に危害を加えることを目的とした意図的な政策だ」と強く非難しました。ベツェレムのユリ・ノバク代表は、自らが「ジェノサイドを犯している社会の一員」であることに深い痛みを覚えつつも、真実を明確に伝える義務があると語っています。

イスラエル政府の反論と国際社会への批判

これらの報告に対し、イスラエル政府報道官は「この国には言論の自由がある。だが我々はこの主張に強く反論する」と述べ、イスラエルがガザへの援助物資搬入を許可していることを強調しました。イスラエル外務省も報告書を「政治的動機に基づいている」として一蹴し、イスラエル軍は「事実無根」だと反論しています。

ベツェレムは、イスラエルの行為はイスラム組織ハマス政権やその軍事力を解体する試みとして「正当化することも説明することもできない」と断言。また、ガザの状況に対する責任はイスラエル政府にあるとしながらも、ジェノサイドを許容している国際社会にも批判の矛先を向けています。特に欧州と米国の指導者たちが、ジェノサイドを阻止するための具体的な行動を控えただけでなく、イスラエルの「自衛権」を認める声明や武器弾薬の提供を通じてジェノサイドを可能にしたと指摘。国際司法裁判所(ICJ)が「イスラエルの行為はジェノサイドに該当する危険が大きい」と判断した後も、その支援が続いている現状に警鐘を鳴らしています。

国内からの懸念:イスラエル大学学長の公開書簡

このような状況の中、28日にはイスラエルの名門5大学の学長が連名で、ベンヤミン・ネタニヤフ首相宛てに公開書簡を発表し、ガザにおける危機的状況への深い懸念を表明しました。書簡は、「多くのイスラエル国民と共に我々も、ガザで日々発生している恐ろしい光景に衝撃を受けている。ガザでは飢えと病気が最も弱い人たちの命を奪っている」と指摘。さらに、一部の政治家が「ガザの意図的な破壊と民間人の強制的な避難を支持している」発言に「戦慄(せんりつ)を覚える」と記し、国内からも人道危機に対する強い懸念が示されています。

今回のイスラエル人権団体によるジェノサイド認定は、ガザ情勢を巡る国際的な議論に新たな側面をもたらすものです。イスラエル政府の反論、国際社会の対応、そして国内からの批判の声が入り混じる中、ガザの人道危機は依然として深刻さを増しており、国際的な監視と解決への圧力がますます重要になっています。


参考文献