近年、日本社会に大きな衝撃を与えたジャニー喜多川氏による性加害問題。この複雑な問題の核心に迫る二冊の書籍が相次いで出版され、特に旧ジャニーズ事務所の元社長、藤島ジュリー景子氏の著書は、その内容と出版経緯を巡り、広範な議論を巻き起こしています。本記事では、ジュリー氏の著書が問いかける「知らなかった」論争の真意と、その背景にある出版業界の動向を探ります。
意外な出版元、新潮社と『ラストインタビュー』の背景
藤島ジュリー景子氏の著書『ラストインタビュー 藤島ジュリー景子との47時間』の出版元が新潮社であることは、多くの関係者を驚かせました。かつて「週刊新潮」や写真週刊誌「FOCUS」が旧ジャニーズ事務所のタレントのスキャンダルを報じ、同事務所と一定の距離を保ってきた歴史があるからです。なぜ、これほど批判的なスタンスを取ってきた新潮社が、この書籍を世に出すことになったのか、疑問の声が上がりました。
この書籍は、当初、小説『イノセント・デイズ』などで知られる作家・早見和真氏によって、週刊文春を擁する文藝春秋に持ち込まれていた経緯があります。文春側も連続インタビューに前向きな姿勢を示したものの、詳しい経緯は不明ながら最終的に出版は見送られ、新潮社が引き受ける形となりました。もし文藝春秋から出版されていれば、より厳しい視点や深い真相が描かれた可能性は否定できず、この出版経緯自体が、ジュリー氏の書籍の「真意」を読み解く鍵となります。
「知らなかった」を貫く書籍と「アリバイ本」の指摘
2023年5月14日に公開された藤島ジュリー景子氏の「謝罪動画」と文書は、「知らなかったでは決してすまされない話だと思っておりますが、知りませんでした」という発言で世間の大きな反感を買いました。この開き直りとも受け取れる姿勢は、更なる批判を招き、社会的な信頼を大きく損ねる結果となりました。
ジャニーズ性加害問題に関する記者会見で、深々と頭を下げる藤島ジュリー景子氏
そして、彼女の著書『ラストインタビュー』は、この「知らなかった」という主張を裏付けるための「アリバイ本」としての性格が強いと指摘されています。実際、書籍のほとんどのページが、ジャニー喜多川氏の性加害行為やその周囲の状況について「何も知らなかった」という記述で貫かれています。もし彼女が事件の真相を詳細に語れば、自身の立場を危うくし、破滅に繋がりかねないため、深層に踏み込むことは避けたと見られています。この書籍は、ジュリー氏の個人的な心情を綴る側面があるものの、世間が本当に求めている性加害問題の「真相解明」や、組織としての責任の明確化からは距離があると言わざるを得ません。
二宮和也氏『独断と偏見』に見るもう一つの視点
一方で、国民的アイドルグループ「嵐」の二宮和也氏が上梓した『独断と偏見』(集英社新書)も、この時期に出版された注目すべき一冊です。この書籍は性加害問題に直接言及するものではありませんが、旧ジャニーズ事務所に長年所属したタレントとしての視点や心情が綴られており、読者にとっては、ジュリー氏の著書とは異なる角度から問題の背景を考察する機会を提供します。
結論:透明性と責任追及の行方
藤島ジュリー景子氏の著書は、旧ジャニーズ事務所が直面した性加害問題に対する公式な言及として注目されましたが、その内容は「知らなかった」という主張の補強に主眼が置かれていると分析できます。これは世論が求める真の透明性や責任追及とは隔たりがある点が浮き彫りになったと言えるでしょう。今後、旧ジャニーズ事務所から名称変更したSTARTO ENTERTAINMENTと、関連するメディアの動向が、この問題の真の解決に向けてどのような役割を果たすのか、引き続き注視していく必要があります。
Source: https://news.yahoo.co.jp/articles/bded7e9d2ba5edc5c0a716e5fe84653c7661c454