ガソリン税の暫定税率廃止を巡る議論が活発化する中、その代替財源の確保は喫緊の課題となっています。政治ジャーナリストの田崎史郎氏は、この問題の鍵を握る人物として、自民党税制調査会長の宮沢洋一氏に言及しました。宮沢氏の税制に関する深い知見が、今後の議論の方向性を大きく左右すると田崎氏は指摘しており、単なる減税では終わらない可能性が浮上しています。
与野党6党合意の概要と今後の展開
自民党、立憲民主党など与野党6党の国対委員長は10月30日、国会内で会談し、ガソリン税の暫定税率廃止について「今年中のできるだけ早い時期に実施する」と明記した合意文書に署名しました。この合意に基づき、新たに実務者協議の場を設けて制度設計を検討し、秋の臨時国会での廃止法案成立を目指す方針が確認されています。しかし、廃止に伴う1.5兆円規模の代替財源の確保、流通への影響回避、地方財政への配慮といった課題は依然として残されており、これらの点で与野党が一致できるかが焦点となります。合意文書では「速やかに与野党合意の上、法案を成立させる」と強調され、8月1日召集の臨時国会中に実務者協議の場を新設し、閉会中も精力的に検討を進めることが盛り込まれました。与野党は8月1日に初協議を行う方向で調整しています。
宮沢洋一税調会長の専門性と議論への影響
田崎史郎氏は、今回の協議会の出席者、特に自民党から参加する宮沢洋一税制調査会長の存在が極めて重要だと強調します。立憲民主党や日本維新の会、国民民主党からは政調会長が出席するのに対し、自民党は「税制の本当のプロ中のプロ」である宮沢氏が参加するとのことです。
ガソリン税の暫定税率廃止における財源確保の議論で重要な役割を担う自民党税制調査会長の宮沢洋一氏田崎氏は、宮沢氏がガソリン税暫定税率を廃止する代わりに1.5兆円の財源をどこから持ってくるかという議論に、相手側を「どんどん引き込んでいく」と予測。税制に関する知識レベルが圧倒的に宮沢氏の方が上であるため、「宮沢さんがいろいろレクチャーしながらやっていくと、それはそうだねって、論理の世界だから税は」と、議論が宮沢氏のペースで進む可能性を示唆しました。
廃止に伴う「増税」の可能性と田崎氏の警鐘
田崎氏の最大の懸念は、ガソリン税暫定税率の廃止が、最終的には他の形での「増税」につながるのではないかという点です。彼は「減税だったのに最後になってみたら増税も結構あるねっていうことになるんじゃないか」と述べ、具体例として法人税の引き上げや、ガソリン税の暫定税率はなくなるものの「新たな税金をつくっちゃう」可能性を挙げました。田崎氏は、「これ素直に1.5兆円分を生み出すってのは増税以外にないと思いますよ、これ」と断言し、財源確保の厳しさを強調しました。過去には参院選前の通常国会で野党が廃止法案を共同提出し衆院で可決されたものの、与党が過半数を占める参院で採決されずに廃案となった経緯があり、今回の議論の行方が注目されます。
ガソリン税の暫定税率廃止に向けた与野党の合意は進むものの、1.5兆円という巨額の代替財源の確保は容易ではありません。自民党税制調査会長である宮沢洋一氏の税制に関する専門知識が、今後の実務者協議において中心的な役割を果たすことは確実です。田崎史郎氏が指摘するように、この議論は単なるガソリン税の減税に留まらず、新たな税の創設や既存税目の増税に繋がり、国民生活に大きな影響を与える可能性を秘めています。今後の協議の進展と、代替財源を巡る具体的な税制案に、引き続き注視が必要です。
参考文献