カナダがパレスチナ国家承認へ表明:高まる国際圧力とイスラエル、米国の反応

カナダのカーニー首相は7月30日、9月の国連総会においてパレスチナを国家として承認する意向を表明しました。パレスチナ自治区ガザにおける人道状況の深刻化を受け、国際社会からイスラエルへの圧力が一層強まっています。これは、ガザでの停戦や人質解放に向けた国際的な取り組みの中で、イスラエルに新たな判断を迫る動きとなるでしょう。

主要G7国が追随:フランス、英国に続くカナダの動き

先進7か国(G7)の中でパレスチナ国家承認の方針を明らかにしたのは、フランス、そして条件付きで同様の方針を示した英国に続き、カナダが3か国目となります。各国は9月までにガザ地区での停戦などの措置をイスラエルに求めており、国際的な連携が加速しています。

首都オタワで記者会見を開いたカーニー首相は、ガザでの深刻な飢餓に言及し、「平和と安全を実現するには国際社会が連携して行動する必要がある」と強調しました。また、「イスラエルの平和には、安定したパレスチナ国家が必要だ」との見解を示し、二国家解決への強い意思を表明しました。

国家承認の前提として、カーニー首相はパレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長に対し、2026年に予定される評議会(国会に相当)選挙からイスラム主義組織ハマスを排除し、パレスチナ国家の非武装化に取り組むことを求めました。選挙や改革の実施には不透明な部分も多いとみられていますが、カーニー首相は30日にアッバス議長と会談し、改革への約束を確認したと報じられています。

国際社会の承認拡大と米国・イスラエルの反発

現在、パレスチナ自治区を国家として承認している国は約140か国に上ります。直近では、エマニュエル・マクロン仏大統領とキーア・スターマー英首相も7月下旬に相次いでパレスチナ国家を承認する考えを表明しており、欧米諸国における認識の変化が顕著になっています。

英仏に追随する形でカナダが承認方針を打ち出したことに対し、イスラエル外務省は31日、「ハマスを利するものであり、ガザでの停戦や人質解放の枠組みを実現するための取り組みを損なう」と強く反発する声明を発表しました。また、米国のドナルド・トランプ前大統領も自身のSNSに「我々がカナダと貿易協定を結ぶのはとても難しくなるだろう」と投稿し、承認反対の立場を表明するなど、主要国間の意見対立が鮮明になっています。

イスラエルの外交的孤立と強硬路線の行方

米国を除く西側諸国がパレスチナ国家承認に向けて動き出したことは、イスラエル国内で「外交的な失敗」と受け止められています。有力紙イディオト・アハロノトは31日、「津波のような動きだ」と報じ、この国際的な流れに対するイスラエル国内の危機感を伝えています。

ヨルダン川西岸では、イスラエルの入植地拡大が続いており、パレスチナ国家樹立のための土地はほとんど残されていないのが現状です。入植地拡大を推進してきたベンヤミン・ネタニヤフ首相は、パレスチナ国家を認めないという強気の方針を崩していません。

しかし、主要な西側諸国が政策変更に踏み切ったことで、イスラエルはガザでの停戦に向けた協議を進めざるを得ない状況に追い込まれています。7月30日にはエルサレムの国会前で、ガザの併合を求める極右支持者らによるデモが行われるなど、国内には強硬な意見も存在しますが、国際社会からの圧力は無視できないレベルに達しています。イスラエル外務省のアロン・リエル元次官は本紙の取材に対し、「パレスチナ国家承認は象徴的な意味が強いが、二国家解決に向けた議論が(国際社会で)再開されるだろう」と指摘しており、今後の外交交渉の行方が注目されます。

イスラエル・エルサレムの国会前でガザ併合を求める極右支持者のデモ、国際的な圧力の中でも強硬な国内世論の一端イスラエル・エルサレムの国会前でガザ併合を求める極右支持者のデモ、国際的な圧力の中でも強硬な国内世論の一端

国際社会がパレスチナ国家承認の動きを強める中、イスラエルは外交的に厳しい局面に立たされています。この動きは、長年膠着状態にあった中東和平プロセスに新たな変化をもたらす可能性を秘めており、今後の国際社会の動向とイスラエルの対応が注目されます。


参考文献