梁錦徳氏に「国民勲章牡丹章」授与:強制動員被害者の長き闘いと日韓関係の複雑性

日帝強占期における強制動員被害者の人権回復に生涯を捧げてきた梁錦徳(ヤン・グムドク)氏に、韓国の最高峰人権賞の一つである「大韓民国人権賞(国民勲章牡丹章)」が授与されました。これは、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の反対によって叙勲が一時取り消されてから3年ぶりのことであり、長年の苦難と闘いがようやく報われた形となります。本記事では、この叙勲の経緯とその背景にある複雑な日韓関係、そして依然として残る課題について詳述します。

国民勲章牡丹章授与の背景と詳細

韓国の国家人権委員会は8月3日、前日の8月2日に光州(クァンジュ)広域市東区にある療養病院を訪問し、梁錦徳氏に国民勲章牡丹章を伝達したと発表しました。国民勲章は国家社会の発展に顕著な貢献をした人物に授与される勲章であり、その中でも「牡丹章」は国民勲章の5等級中、2番目に高い栄誉とされています。

梁氏の健康状態を考慮し、大規模な授与式は別途行われず、光州市庁の公務員や市民ら約30人が、この歴史的瞬間を祝うために同席しました。国家人権委員会の安昌浩(アン・チャンホ)委員長に代わって牡丹章を伝達した人権委光州事務所のユク・ソンチョル所長は、「2022年から推進が保留されていた牡丹章が、李在明(イ・ジェミョン)政府の主導で授与されることになった」と説明し、梁氏が「長い間、日本政府から謝罪も受けられず、本当に苦労された」と、その苦難に寄り添う言葉を述べました。これに対し梁氏は、「李大統領のおかげで牡丹章を受けることができた。ありがたく思い、一生懸命働く大統領を支持する」と感謝の意を表明しました。

療養病院で国民勲章牡丹章を手に記念撮影する強制動員被害者、梁錦徳氏。長年の人権回復運動の功績が称えられた瞬間。療養病院で国民勲章牡丹章を手に記念撮影する強制動員被害者、梁錦徳氏。長年の人権回復運動の功績が称えられた瞬間。

梁錦徳氏の半生と人権回復への尽力

梁錦徳氏は全羅南道羅州(チョルラナムド・ナジュ)で生まれ、1944年5月、小学校6年生の時に「日本に行けばお金がたくさん稼げ、中学校にも進学できる」という日本人校長の言葉に騙され、日本の三菱重工業名古屋航空機製作所に強制動員されました。わずか14歳での過酷な労働は、彼女の人生に深い傷を残しました。

戦後、梁氏は沈黙することなく、自身の、そして他の被害者の人権回復のために立ち上がりました。1992年に日本政府を相手取って初の訴訟を起こして以来、実に30年もの長きにわたり、日帝時代の被害者の権利回復運動の最前線で活動を続けてきました。その並々ならぬ功労と献身が認められ、2022年には大韓民国人権賞の受賞者に選出されたものの、当時の外交部の反対により、叙勲は一旦取り消されるという不当な経緯がありました。

しかし、今年7月29日の国務会議において、梁氏への国民勲章授与案が改めて議決され、国家人権委員会は勲章受領後直ちに梁氏に伝達しました。国家人権委員会の安昌浩氏は、「梁氏の貴い功労に対する礼遇が適時に行われなかった点について、非常に残念に思う」と述べ、「遅ればせながらも、人権のための労苦と功績が認められたことを心から歓迎する」と、その喜びと敬意を表明しました。

強制動員問題の現状と「第三者弁済案」への論争

一方で、梁氏をはじめとする強制動員被害者の支援活動を続けてきた市民団体「日帝強制動員市民の会」は、今回の叙勲の場には出席しませんでした。同団体は同日、声明を発表し、李在明政府に対して改めて「強制動員第三者弁済案」の撤回を強く求めました。この「第三者弁済案」とは、日本政府や戦犯企業に代わり、韓国政府が国内企業の寄付金によって賠償金を支払うという方式であり、被害者団体や関係団体から「加害者の責任を免責するものだ」として、一貫して強い批判を受けている方式です。

「日帝強制動員市民の会」は声明の中で、「政府は今回の叙勲再開が尹錫悦政府の過ちを正す趣旨だとしているが、前政権の代表的な歴史的後退事例である強制動員第三者弁済については『国家間の関係では政策の一貫性が重要だ』として、変更するつもりがないことを明確にしている」と指摘しました。さらに、「これは『半分の正義』であり、必要なものだけを選んで取る『選択的正義』だ」と強く批判。「正しい国を築こうと声を上げてきた広場の声を無視することだ」と、政府の姿勢に対する不満を表明しました。

結論

梁錦徳氏への国民勲章牡丹章の授与は、長年の強制動員被害者の人権回復運動における大きな成果であり、彼女の献身的な努力が国によって正式に認められた歴史的な瞬間です。しかしながら、この叙勲は、強制動員問題そのものが完全に解決されたことを意味するものではなく、「第三者弁済案」を巡る韓国政府と市民団体の間の対立は依然として続いています。

今回の叙勲が、日韓両国が過去の歴史に向き合い、真の和解と未来志向の関係を築くための、新たな対話のきっかけとなることが期待されます。しかし、その道のりは依然として複雑であり、被害者の声に耳を傾け、彼らが納得できる公正な解決策を見出すための努力が、今後も継続されることが不可欠です。


参考文献: