韓国で波紋広がる「60代高校生」トラブル、生徒・教職員困惑の現場実態

韓国・慶尚南道のある高校に60代の男性が入学し、在校生や教職員、さらには教育庁の関係者までが深い困惑を隠せない事態が相次いで報じられています。JTBCの報道番組「事件班長」がこの異例のケースを詳しく伝えています。

合法的な入学、しかし現場は困惑の声

問題の男性は既に大学を卒業しているにもかかわらず、2025年3月に高校1年生として入学しました。韓国の「初等中等教育法」では、「中学校卒業またはこれと同等の学力を有する者」に高校入学資格が認められているため、学校側は大学卒業者である男性の入学を法的に拒否することができませんでした。

しかし、入学直後から男性は特異な行動を見せ始めます。1年生全体の代表選挙に立候補し、積極的に活動を展開する一方で、生徒たちとの間で摩擦が表面化していきました。匿名の生徒アンケートからは、「自分を“マンゴーオッパ”と呼ばせ、自作の詩や曲を配って支持を訴えていた」といった証言が寄せられています。

生徒・教職員との相次ぐ摩擦と「学校暴力」通報

男性の行動は教室の内外で波紋を広げました。女子生徒の前で尻を振るダンスを披露したり、授業中に教師に対し「漢字で授業してほしい」と要求したりする場面も確認されています。給食時には「ご飯をおいしく食べてね」と大声で繰り返すなど、生徒らが不快感を覚える行動が報告されました。

JTBC「事件班長」の放送画面。韓国の高校で起きた高齢男性の入学トラブルが報じられている。JTBC「事件班長」の放送画面。韓国の高校で起きた高齢男性の入学トラブルが報じられている。

さらに深刻なのは、男性が1学期の間に計8人もの生徒を「学校暴力」として通報したことです。ある生徒がグループチャットで「正しい文法で書いてください」と指摘しただけで「無礼だ」として通報された例もあり、その通報基準に疑問が呈されています。学校関係者によると、男性は年長者であることを理由に「窓を開けろ」「閉めろ」「静かにしろ」などといった過度な指示を繰り返し、「自分を“学生様”と表記しろ」とまで求めたといいます。関係者は「明らかにパワハラ的な行動だ。生徒たちは彼を見ると息をひそめている」と、生徒たちの精神的な負担を訴えています。

本人の反論と教育庁の見解

このような状況に対し、男性は番組側に対し、自身こそが被害者であると強く主張しています。「学校暴力通報はさらなる被害を防ぐための緩衝的措置だ。侮辱的な言葉を使ったこともない。極限状態だったので最後の手段として通報したまでだ」と述べ、16ページにわたる反論文書と、60ページに及ぶ関連資料を提出し、自身の正当性を訴えています。

この異例の事態に、慶尚南道教育庁も困惑を隠しきれません。教育庁関係者は、「彼は保護者だった時代から“子どもを守る”という名目で学校や教育庁に過度に干渉してきた経緯がある。今は自分が生徒なのか保護者なのか混乱しているようだ。学生としての適切な行動を望む」と、今後の対応に苦慮している様子をうかがわせています。

結論

この「60代高校生」のケースは、現行の教育制度の隙間から生じた特異な学園トラブルであり、生徒の安全な学習環境の確保と、個人の入学資格の尊重という二つの側面の間で、教育現場が直面する新たな課題を示しています。法的な正当性がある一方で、現実の教育環境における人間関係やハラスメントの問題が浮上しており、今後の行方が注目されます。

参考文献