米首都ワシントンD.C.で、ドナルド・トランプ前大統領の政権で「政府効率化省(DOGE)」に抜擢され働いていた10代の「天才公務員」が、集団暴行事件の被害に遭い、波紋が広がっている。この事件に対し、トランプ氏自身が激しく批判し、ワシントンD.C.の少年法制度の欠陥を強く指摘したことで、議論を呼んでいる。
若き公務員エドワード・コリスティン氏が被害に
この事件の被害者は、DOGEの職員であるエドワード・コリスティン氏(19歳)だ。彼は国務省のITアドバイザーとしての経歴を持ち、現在もトランプ政権下で公務員を務めている。コリスティン氏は今月3日、ワシントンD.C.で自動車強盗を阻止しようとした際、約10人の少年たちに取り囲まれ、集団で暴行を受けたという。その際、彼が所持していた黒いiPhoneも奪われる被害に遭った。トランプ氏は、この被害を受けたコリスティン氏の血まみれになった写真を自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に投稿し、ワシントンD.C.の暴力犯罪を厳しく非難する長文のメッセージを発信した。
米政府効率化省(DOGE)で働く10代の公務員、エドワード・コリスティン氏。SNS投稿のスクリーンショット。
トランプ氏がD.C.の少年司法制度を問題視し、法改正を主張
トランプ氏は今回の事件を受け、「ワシントンD.C.は、全米そして世界中の人々にとって安全で清潔で美しい都市でなければならない」と強調。さらに、「もしD.C.が迅速に対応しないのであれば、連邦政府が直接D.C.を統治・運営する」と強い警告を発した。ワシントンD.C.では、2014年から民主党所属のミュリエル・バウザー市長が3期連続で市政を担っており、トランプ氏の第1期政権時代から両者の間にはしばしば対立が見られた。
トランプ氏はまた、加害者たちが「自分たちには何も起きない」と認識しているため、「法の執行を恐れていない」と指摘。その上で、「法律を変えるべきだ。未成年者であっても、14歳以上であれば大人と同様に起訴し、長期間刑務所に入れる必要がある」と、少年法の抜本的な改正を強く主張した。現在、ワシントンD.C.の法律では、18歳未満の未成年が刑事事件で起訴された場合、重大犯罪や前科がある場合を除き、原則として少年裁判所が管轄することになっている。
若き公務員への暴行事件が浮き彫りにするD.C.の課題
今回の10代「天才公務員」への集団暴行事件は、ワシントンD.C.における少年犯罪の深刻さ、そして現行の少年司法制度の有効性に対する根深い疑問を改めて浮き彫りにした。トランプ氏による強い批判と少年法改正の主張は、今後の米国の地方自治と連邦政府の関係、さらには未成年犯罪への対処法について、全国的な議論を促すことになるだろう。この事件は、単なる犯罪報告に留まらず、司法制度、治安、そして政治的対立といった複合的な問題が絡み合う、現代社会の課題を象徴している。