政権与党が衆参で過半数を失い、日本の政治は混迷のさなかにあります。こうした状況において、改めて「宰相の資質」について考えることが重要です。歴代総理大臣は、何が評価され、何が過ちとされたのでしょうか。週刊ポストは、政治家OB、官僚OB、評論家、ジャーナリストら「政治のプロ」31人にアンケート調査を実施し、戦後の「最高の総理」「最低の総理」を選んでもらいました。「最高の総理」の1位は吉田茂氏、2位は田中角栄氏でした。
中曽根康弘氏:大統領型総理の評価
「最高の総理」ランキングで3位に選ばれたのは「大勲位」中曽根康弘氏です。「大統領型総理大臣」と称され、トップダウンの手法で国鉄やNTTの民営化を断行。外交面では日米関係を強化し、日本の国際的な存在感を高めました。中曽根内閣で内政審議室長を務めた的場順三氏(第一次安倍政権で官房副長官)は、中曽根氏を「仁啓のある方」と評価し、その姿勢を高く評価しています。
池田勇人氏:時代的役割を理解した宰相
4位にランクインした池田勇人氏について、評論家の塩田潮氏は「自分の能力と時代的役割をよくわかっていた総理だった」と指摘します。池田氏は総理就任前から、日本が何を求め、自身に何ができるかを明確に意識していました。前任の岸信介氏が得意とした日米安保条約改定のような分野ではなく、岸氏の退陣後、彼は「所得倍増」を掲げ、政策の軸を安保から経済へと見事に転換させたのです。自分以外に適任者はいないという確固たる自負が、その指導力の源泉でした。
安倍晋三氏と小泉純一郎氏:毀誉褒貶の評価
安倍晋三元首相。「最高の総理」と「最低の総理」両方のランキングに登場し、毀誉褒貶が分かれる評価を受けている。(時事通信フォト)
今回のアンケートでは、安倍晋三氏と小泉純一郎氏の評価が大きく分かれる結果となりました。安倍氏は「最高の総理」で5位にランクインする一方で、「最低の総理」では4位という位置付けです。作家・ジャーナリストの門田隆将氏は、安倍氏を「戦後初めて国際リーダーとして世界の政治家のセンターに立った」と評価。「自由で開かれたインド太平洋戦略」を提唱し、外交を主導した点が特筆されます。小泉氏についても同様に、その功績と課題の両面が指摘され、評価が複雑に分かれています。
歴代総理の評価から学ぶ現代の宰相選び
「最高の総理」「最低の総理」の評価を通じて、歴代の宰相たちが直面した課題や、その決断が後世にどう影響したかが浮き彫りになります。リーダーシップ、決断力、国民への説明責任、そして国際社会における存在感。これらの要素が複雑に絡み合い、それぞれの総理大臣の評価を形成しています。現代の政治の混迷の中、次期総理に求められる資質を考える上で、過去の宰相たちの評価は重要な示唆を与えてくれるでしょう。
参考資料
- 週刊ポスト アンケート調査
- ニュースポストセブン:政治家・官僚・評論家が選ぶ「最高の総理ランキングトップ10」「最低の総理ランキングワースト10」