先の参院選で14議席を獲得し大躍進を遂げた参政党は、懲罰委員長のポストが割り当てられ、さらに8月5日には参院予算委員会で初の質疑時間が与えられるなど、国会内での存在感を日増しに強めています。神谷宗幣代表（47）自ら質問に立つ姿は、衆院選に向けてその動向が注目される一因となっています。立憲民主党の小沢一郎氏（83）が自身のYouTubeチャンネルで「このままだと、次の選挙は、参政党は全国選挙区に（候補者を）出すよ」と警戒感を露わにするほどです。しかし、この躍進の裏で、参政党の“ブレ”や“詰めの甘さ”が参院選後に露呈しているのもまた事実です。
本記事では、これまで参政党の政治資金パーティーに何度も足を運び、その動向をつぶさにウォッチしてきたライターの黒猫ドラネコ氏の見解を交えながら、参政党が直面する課題を深掘りします。
国会で発言する参政党の神谷宗幣代表
「日本人ファースト」の変遷とメディア対応の課題
参院選で「日本人ファースト」をキャッチコピーに掲げ、外国人問題を争点に据えた参政党は、多くの有権者の関心を惹きつけました。しかし、一部候補者の「外国人が優遇されている」といった根拠のない言説は、“排外主義を煽っているのではないか”という指摘を招きました。
選挙期間中、メディアからこの点を問われると、神谷氏は発言のトーンを下げることがありました。例えば、TBSの取材に対し、「（『日本人ファースト』）は選挙の間だけ。終わったらそんなことで差別を助長することはしない」「この言葉は党員のアンケートに応じて決めたもの」と回答。さらに、投票締め切り後の会見で“外国人特権は存在するのか”と問われると、「外国人に特権？特にないのではないか。日本人が平等じゃないと感じるケースはあるのでは」と述べ、選挙期間中の強気な演説とは異なる姿勢を見せました。
黒猫ドラネコ氏は、この現象について「これまでも神谷氏は支持者の前ではぶち上げ、メディアでツッコまれたら“日和る”ということを繰り返してきました。パフォーマンスのようなもので、細かいことまでは考えていない」と指摘します。彼は、参政党がYouTubeなどを介した一方的な発信に慣れ過ぎており、メディアからの質問や批判への対応に不慣れであるとし、「議席を増やしたことでメディアの注目度は増し、国会での発言も増える。ボロを出しては批評される“いばらの道”が続くと思います」と分析しています。
政策面の“詰めの甘さ”が露呈
参院選後には、神谷氏の政策に関する“詰めの甘さ”が露呈する一幕もありました。ニコニコ生放送の開票特番で“ひろゆき”こと西村博之氏から“最初にどのような法案を提出しようと考えているのか？”と問われた際、神谷氏は「“コロナ政策の見直しをやる”という法案」と回答。参政党が選挙期間中に一貫して「外国人問題」を喧伝していただけに、SNSでは「想定外だ」との声が多く上がりました。
黒猫ドラネコ氏は、この点について「政策はまとまっていない印象です。意味不明なものを出しても問題提起のテイで“議論していけばいい”とか言うんでしょうね」と述べ、参政党の政策立案の現状を批判的に見ています。また、神谷氏がコロナ関連法案を最初の提出法案として切り出したことについては「ビックリしました」とし、「もともと“反・感染対策”の集団なので、コロナ関連の話を国会でやるのは参政党の悲願でしょうけど、今回の選挙で初めて支持した人がそれを望むかは疑問ですね」と、支持層との乖離の可能性を示唆しました。
所属議員のSNS投稿と党内統制の欠如
最近では、参院選全国比例で当選した梅村みずほ氏（46）のX（旧Twitter）での投稿が物議を醸しました。梅村氏は8月2日、広大なソーラーパネルの動画を引用し、「このメガソーラー、どこの自治体にあるものか、ご存知の方がいらっしゃいましたら教えてください」とリポスト。これに対し、「熊本ではないか」との情報が寄せられ、梅村氏は「多くの方から『熊本ではないか』と情報提供していただきました。真偽を確かめながら必要な問題提起に繋げられればと思います」とコメントしました。しかし、元の動画は中国共産党機関紙「人民日報」の「People’s Daily」に掲載された、中国の山西省の太陽光発電施設のものであり、梅村氏が情報源を確認せずに誤解を招く可能性のある投稿をしたことに対し、多くの疑問の声が寄せられました。投稿は削除されず、釈明もなされていません。
また、選挙期間中には東京選挙区で2位当選したさや氏（43）も、公職選挙法に抵触する恐れのある投稿をしたユーザーに感謝のリプライを送り、後に削除する騒動がありました。
黒猫ドラネコ氏は、このような事態について党内の統制が取れていないと指摘し、「党関係者に対して、日頃から統制をかけているわけではないと思います。所属議員に裁量を持たせる党はほかにもありますが、今年6月に入党した梅村さんは、参政党ではのびのびできると満足げに話していました」と述べます。彼は、参政党の「炎上したら神谷氏が“日和る”」というパターンを指摘し、過去の初鹿野裕樹議員による「非国民」発言や、地方支部によるジャンボタニシ問題の際にも、神谷氏が「推奨しているわけではない」「発信を控えるよう指導した」と“火消し”に回った例を挙げました。
支持者の「推し活化」と批判への「無敵」対応
神谷代表の主張の変節や、所属議員の「やらかし」は以前から問題視されてきましたが、支持者がそれを咎めるような動きはあまり見られていません。黒猫ドラネコ氏は、これを「支持者の甘さがある」と指摘。「たとえば、神谷氏の発言が変節しても、違和感を抱かなくなっている支持者ばかりになっています。いわば“推し活化”している。間違っていようが、参政党が大きくなるのならそれでいいと思う人が残るので、盛り上がれたら何だっていいんですよ」と、支持層の現状を分析します。
一方で、参政党自身は批判を受けると、「批判する方が悪い」「都合が悪いことを言われたから叩くのだ」「妨害されている」という方向に持っていくのが常套手段だと黒猫氏は述べます。これにより支持者の疑念が和らぎ、党への結束が強固になるため、「こうなると“無敵”なんですよね」と表現しました。党内においても、結成初期からアドバイザーを務めた武田邦彦氏（82）など、神谷氏や党に苦言を呈した人物は排除されてきた経緯があり、黒猫氏は「参政党が大きくなる過程で、内部で揉めることを避けるためだったのかもしれませんが、それもあって今は甘いことを言う人しかいないと思います」と締めくくりました。
宮城県との公開討論拒否に見る「正々堂々」との矛盾
神谷代表は参院選中に「宮城県は水道事業を外資に売った」と発言し、宮城県側から「一部県民に誤解を与えていることは極めて遺憾」として意見交換会を求められていました。しかし、8月6日、参政党側が公開討論を拒否していたことが明らかになり、宮城県の村井嘉浩知事は「逃げたということ。非常にがっかりした」とコメントしました。
これまで神谷代表がXや演説でたびたび宣言してきた「正々堂々闘う」というスタンスと、今回の公開討論拒否という対応は、明確な矛盾を孕んでいます。参政党の躍進とその後の課題は、今後もメディアや国民の厳しい目に晒され続けることでしょう。
参考資料
- 神谷宗幣代表、発言“ブレ”に専門家「ボロを出しては批評される“いばらの道”」参政党の“詰めの甘さ”露呈（SmartFLASH via Yahoo!ニュース）
https://news.yahoo.co.jp/articles/08d1127a96550336e555a37f05c5eee9059f1d79
