日本維新の会は、度重なる執行部の刷新と内紛の渦中にあります。今月8日、同党は両院議員総会で、前幹事長の藤田文武氏を国会議員代表に選出しました。これは、5日に辞意を表明した前原誠司共同代表の後任人事であり、藤田氏は「国会議員団で一致結束していく」と抱負を述べています。党内では、7月の参議院選挙後の執行部批判が激化し、わずか1年足らずで主要な執行部が総入れ替えされる異例の事態に至っています。
参院選敗北と執行部批判の噴出
今年7月の参議院選挙で、日本維新の会は改選議席数を1つ上回る7議席を獲得したものの、比例票は前回の2022年参院選の780万票から437万票へと大きく減少し、獲得議席も8議席から4議席に半減しました。この結果を受け、前原誠司共同代表をはじめとする党執行部の責任を問う声が噴出。特に、馬場伸幸前代表に近い議員らからは、7月31日の両院議員総会で執行部への厳しい批判が相次ぎました。これにより、8月5日には前原氏が辞任を表明。それに続き、岩谷良平幹事長、阿部司総務会長、漆間譲司国会対策委員長も同調し、執行部刷新の動きが加速しました。
短期間での執行部総入れ替え:繰り返される混乱
振り返れば、維新は昨年10月の衆議院選挙で大敗を喫し、当時の馬場代表や藤田幹事長が責任を追及され、馬場氏は代表選不出馬に追い込まれる形となりました。同年12月1日の代表選で吉村洋文大阪府知事が新代表に選出され、吉村氏は共同代表に前原氏を起用するなど、党執行部を刷新したばかりでした。しかし、その布陣もわずか1年足らずで、吉村代表を除く執行部が再び総入れ替えとなる事態となりました。選挙で党勢が衰退する中で、内紛ばかりが目立つという印象を払拭できない状況が続いています。
吉村洋文代表が登壇し、日本維新の会の結束を訴える様子。党内人事で吉村氏の続投が決定。
「挙党体制」の模索と過去の分裂史
前原氏は5日の辞任表明の際、「人心を一新して、もう一度挙党体制をつくることが大事だ」と述べ、「挙党体制」の重要性を強調しました。実際、日本維新の会は過去に二度の分裂を経験しています。2012年には、元東京都知事の石原慎太郎氏が率いる「太陽の党」と合流して国政に進出しましたが、石原氏と維新創設者の橋下徹氏との間での路線対立が表面化し、2014年に分党しました。さらにその後、みんなの党から分かれた江田憲司衆院議員を中心とする「結いの党」が合流し、新たな第三極として注目を浴びるも、党内対立が激化し、2015年に再び分裂に至りました。これらの過去の経験は、維新が安定した党運営と党勢拡大を目指す上で、内部の結束が不可欠であることを示唆しています。
今回の執行部刷新は、維新が直面する根深い課題を浮き彫りにしています。党勢回復と「挙党体制」の確立に向け、新たな執行部がどのように内部の結束を図り、有権者の信頼を取り戻していくのかが、今後の大きな焦点となるでしょう。