藤井隆が語る「やりたいこと」と「仕事」の真実:楽しむ秘訣と向き合い方

仕事において「本当にやりたいこと」を追求し続けるのは、多くの人にとって容易なことではありません。日々の業務の中で、どうすれば仕事に喜びを見出し、モチベーションを維持できるのか。コメディアン、俳優、歌手として多岐にわたる活動を展開する藤井隆氏が、自身の著書『マ・エノメーリ』(KADOKAWA)で語る仕事に対する哲学は、現代社会で働く私たちに深い洞察とヒントを与えてくれます。本記事では、藤井氏のユニークな視点から、仕事を楽しむ秘訣や、望まない状況との向き合い方を探ります。

「やりたいこと」を追求する藤井隆の原点

藤井隆氏は、幼少期から「嫌々続ける」という経験がほとんどなかったと語っています。学生時代や地域の活動など、「やらなければならないこと」と「やりたいこと」を明確に区別し、前者については「怒られない程度に」という現実的な判断を下していたと言います。一方で、好きなことや興味のあることには熱中し、自ら優先順位をつけて取り組んできた経験が、現在の仕事への向き合い方の基礎となっています。

タレント・藤井隆氏のポートレート。彼が語る仕事術と思考法を体現するような表情。
タレント・藤井隆氏のポートレート。彼が語る仕事術と思考法を体現するような表情。タレント・藤井隆氏のポートレート。彼が語る仕事術と思考法を体現するような表情。

藤井氏の両親は、彼が自身の判断で行動し、その責任を負うことを待ってくれたと述べており、この家庭環境が彼が早い段階から「やりたいこと」や「好きなこと」を選択できる基盤を築きました。芸能界という特殊な環境においても、理不尽な状況に遭遇した際に「嫌だ」とはっきり意見を伝える姿勢は、幼少期からの経験に裏打ちされたものです。しかし、それ以上に「守ってくれる方、大事にしてくださった方が近くにいた」ことへの感謝を忘れていません。この言葉からは、周囲のサポートがいかに重要であるかという、働く上での普遍的な教訓が読み取れます。

「やりたいこと」ができない状況への向き合い方

藤井氏は、多くの人が抱える「やりたいことができない」「やりたくないことをやらされている」という仕事の悩みに対し、独自の解決策を提示しています。

「やりたくないこと」を強制される場合

「やりたくないことをやらされている」状況について、藤井氏は「とても厳しい」と表現し、「丸ごと変えて良いと思うぐらい」だと断言します。これは、個人の幸福感やモチベーションが著しく損なわれる状況であれば、根本的な環境改善やキャリアの転換も視野に入れるべきだという、非常に大胆かつ現実的なアドバイスです。この視点は、現代のワークライフバランスや精神的健康の重要性が叫ばれる中で、特に共感を呼ぶでしょう。

自分の責任で「やりたいこと」ができない場合

もし「やりたいことがやれていない」原因が自分自身にあるのであれば、「やれるように頑張るしかない」と語ります。これは自己成長へのコミットメントを促すものであり、目標達成のための努力の重要性を示唆しています。自分の内側に原因がある場合、それを乗り越えるための具体的な行動計画やスキルの習得が求められます。

外的要因で「やりたいこと」ができない場合

最も複雑なのは、自分に関係のない理由で「やりたいこと」ができないケースです。この場合、藤井氏は二つの考え方を示します。

  1. 意見表明と問題提起: やれなくした相手に「困る」と率直に意見を伝えるパターンです。これはコミュニケーションを通じて状況を改善しようとする積極的なアプローチです。
  2. 現状受容とベストな努力: 「今の自分にはそこまでなのかも」と現状を受け入れ、その範囲でベストを尽くすパターンです。藤井氏は、この「それが丁度良い」時もあるとし、「欲張るな」という示唆が含まれていると語ります。無理に理想を追い求めず、現実の中で最善を尽くす柔軟な姿勢が、心の平穏につながることを教えてくれます。

さらに藤井氏は、本音として、誰かのせいでやりたいことが完璧な形でできなくなりそうな時、キャンセルできるなら思い切ってキャンセルすると明かしています。「嫌々やる方が悪い」という考え方は、仕事の質や個人の精神衛生にとって、無理強いされた仕事がどれほど悪影響を及ぼすかを示唆しています。もしキャンセルが不可能でやるしかない場合でも、自分の中では「やったことにカウントしないかもしれない」というユニークな割り切り方をしています。これは無責任に聞こえるかもしれませんが、精神的な負担を軽減し、自己肯定感を保つための自己防衛策とも言えるでしょう。不本意な状況でもプロとしてベストは尽くすものの、それが自己の理想とかけ離れてしまった場合、その達成感を「カウントしない」ことで、自分を傷つけずに次に進むという藤井氏の処世術が垣間見えます。

結論

藤井隆氏の仕事術は、単なる効率化や成功法則にとどまらず、個人の感情や自己肯定感を大切にする、人間味あふれる哲学です。彼は「やりたいこと」を追求する原点として幼少期の経験と両親からの自律性を挙げ、そして「やりたいことができない」状況に対しては、柔軟な対応力と自己保護の姿勢を示しています。特に、「やりたくないこと」を強制される場合の根本的な変革の勧めや、不本意な仕事を「カウントしない」という割り切り方は、現代社会で仕事のストレスを抱える多くの人々にとって、新たな視点と心の持ち方を提供してくれるはずです。藤井氏の言葉は、完璧を目指すのではなく、自分にとって最適なバランスを見つけ、心の傷を広げないことの重要性を教えてくれます。


参考文献

藤井隆『マ・エノメーリ』(KADOKAWA)