国民的ドラマ『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)で、愛らしい“加津ちゃん”こと野々下加津役を演じ、かつて「天才子役」と呼ばれた宇野なおみさん(35歳)。現在はフリーライターとして多岐にわたる活動を展開しています。子役として過ごした当時の思い出、そして『渡鬼』シリーズ終了後の道のり、現在に至るまでの歩みを、当時語られることのなかった「今だからこそ」の視点で綴るエッセイ連載が始まります。
「渡る世間は鬼ばかり」の“加津ちゃん”こと宇野なおみさん。舞台版での一コマ
「渡鬼」には12年間レギュラー出演、子役時代を振り返る
皆様、ご機嫌よう、初めまして。宇野なおみと申します。小学1年生で劇団に入団し、その後に縁あって『渡る世間は鬼ばかり』という作品に10歳から12年間、野々下加津役としてレギュラー出演しました。
現在は主にライターとして活動しており、歌舞伎に関する記事を執筆したり、声優さんや俳優さんへのインタビューを手がけたり、『名探偵コナン』に関する取材を行ったりしています。加えて、自身のYouTubeチャンネル運営や、通訳・翻訳業務など、多岐にわたる仕事に携わっています。
偶然が重なり「渡鬼」出演へ
「どうやって出演が決まったの?」とよく聞かれますが、そもそもは劇場の稽古場で数メートル走ったことが、私の運命を大きく変える始まりでした。私はお芝居に挑戦したいという思いから、小学1年生で劇団に所属しました。ある日、舞台版『おしん』のおしん役のオーディションを受け、その帰り際のことです。既にオーディションは終了し、帰り支度をしていた私に、当時の『渡鬼』プロデューサーでもあった石井ふく子先生から、「私のところに走って抱きついてみて」と指示されました。オーディションは終わったはずなのに、石井先生自らのお言葉に、とても驚き、戸惑ったことを今でも鮮明に覚えています。
その指示を実行した結果、どうやら石井先生が私に何かを感じ取ってくださったようです。私はおしん役に決まり、9歳だった98年5月と9月に出演することになりました。これがきっかけで「加津」役の候補に上がり、最終的に出演が決まったとのことです。大規模なオーディションで何千人の中から選ばれた、といった華々しい経緯ではなかったのです。
しかも、当初はシリーズの最後にほんの少しだけ出番がある予定だったとか。それが結果として、なぜか12年間も出演することになりました。私が出演し始めた頃、『渡鬼』の視聴率は25%から29%ほどを記録しており、まさに「国民的ドラマ」と呼ぶにふさわしい状況でした。
私にとってテレビ出演は人生で初めての経験。何しろ当時10歳だったことと、生来のんびりとした性格のため、とにかく実感がゼロで、その重大さが全く分かっていませんでした。ちょうど同じ時期に、メインキャストとして出演したスタジオジブリ作品『ホーホケキョ となりの山田くん』の公開が控えていたため、記者会見や細々とした取材が始まっていました。新たな仕事の広がりにはワクワク感を覚えていましたが、本当に事の重大さを理解していなかったのです。今だったら、当時の自分の背中に定規を突っ込んで、襟を正してやりたい。「天衣無縫も大概にしろ」と言わんばかりのありさまでした。
まとめ
宇野なおみさんは、『渡る世間は鬼ばかり』の“加津ちゃん”として子役時代を過ごした後、多岐にわたる分野で活躍するフリーライターへと転身しました。偶然の出来事から始まった女優としての道、そして国民的ドラマへの長期出演という経験は、当時の彼女にとっては「無自覚」なものでしたが、現在の多忙で多彩な活動へと繋がる貴重な礎となりました。彼女が「今だからこそ」語る、子役時代の裏話や現在の挑戦は、読者の皆様に新たな視点と共感を提供することでしょう。
参考文献: