パレスチナ自治区ガザでは、イスラエル軍によるイスラム組織ハマス壊滅を目指す掃討作戦が続く中、住民の女性たちが家族や当局からの保護を失い、性的搾取の脅威にさらされています。深刻な食料不足や生活の困窮が背景にあり、それに付け込む事例が多発。この人道危機下で、女性たちの被害は広がり続けていると指摘されています。
ガザ地区で困難な生活を送るパレスチナ人女性たち
避難生活での性的な要求
ガザ南部マワシで避難生活を送る37歳のスアドさんは、5月の真夜中に携帯電話で耳を疑う言葉を聞きました。食料配給について頼み事をしたばかりの避難所の責任者の男性から、「私を満足させたら、あなたを喜ばせてあげよう。今からビーチで会おう」という誘いを受けたのです。スアドさんは季節農家の夫と娘1人、息子2人とガザ北部で暮らしていましたが、2023年11月、衝突が始まった翌月に夫をイスラエル軍の空爆で失いました。両親の看病も必要な中、一家は瞬く間に困窮し、避難先を転々としながら支援に完全に依存する生活を送っています。住民が殺到する配給所の混乱で負傷し、歩くこともままならない状態でした。男性は100シェケル(約4000円)でスアドさんを誘い出そうとしましたが、彼女はこれを拒否。「禁忌を冒してまで受けなければならない支援は、必要ない」と憤りをあらわにしました。スアドさんは、支援と引き換えに性的な行為を求められることが珍しくない現状に直面し、16歳になる娘の身を案じて「私が死んだらどうなるのか」「男に手を掛けられるくらいなら、一緒に死にたい」と苦しい胸の内を語っています。
ハマス弱体化と治安の悪化
ガザからエジプトに避難した42歳のパレスチナ人ジャーナリスト、アフメド・サイードさんの元には、ガザの女性たちから性的搾取の被害を訴える連絡が頻繁に届いています。サイードさんによると、食料配給を担う現地の慈善団体が関与する事例が相次いでいるといいます。子供に食事を与えるために男性の要求を受け入れた後、自身の行為を恥じて「尊厳の喪失」に苦しむ女性も多いとのこと。サイードさんが被害を訴えても、団体側は「そんな事実はない」と主張するばかりです。
以前はハマスが主導する「ガザ政府」が治安維持を担い、最低限の秩序が保たれていましたが、イスラエルの攻撃によりハマスが弱体化し、その秩序も失われました。主な女性保護団体も戦禍で活動を停止しており、ハマスと対立するパレスチナ自治政府も無策の状態です。サイードさんは「ハマスに正義があったとは言えない。ただ、無秩序となったガザで女性を守る者が誰もいなくなった」と、現状の深刻さを嘆いています。
結論
ガザ地区における女性の性的搾取は、紛争によって引き起こされた食料不足、生活困窮、そして社会秩序の崩壊が複雑に絡み合った深刻な人道問題です。かつての保護体制が機能不全に陥る中、特に脆弱な立場にある女性たちは、尊厳を脅かされる危険に常に晒されています。この問題に対し、国際社会からの早急な関心と具体的な支援が求められています。
参考資料
- 時事通信社 (2025年8月9日). ガザの女性、性搾取の脅威に=ハマス弱体化で保護失う―食料難などにつけ込む事例相次ぐ. Yahoo!ニュース.
https://news.yahoo.co.jp/articles/ee623f02d3f854122e599bc9e7ea945540c5c634