今月15日に予定されている米露首脳会談では、ウクライナの領土問題が主要な焦点となる見通しです。ロシアのプーチン大統領は、ドナルド・トランプ米国大統領を巻き込み、自国に有利な条件をウクライナに受け入れさせることを狙っているとみられ、ウクライナ側の激しい反発は避けられない状況です。会談直前まで、激しい駆け引きが繰り広げられると予想されます。
プーチン氏、ウクライナ東部掌握へ「外交的勝利」狙う
ウォール・ストリート・ジャーナル(8日付)の報道によると、プーチン大統領は米国のウィトコフ特使との会談で、ウクライナ東部ドネツク州からのウクライナ軍撤退を条件に、全面的な停戦に応じる意向を示したと報じられました。現在、ドネツク州におけるロシア軍の支配地域は約7割とされていますが、戦況は依然として膠着状態にあります。ウクライナ軍が撤退すれば、残りの3割の地域を無傷で掌握できることになり、ロシアにとっては極めて大きな「外交的勝利」となるでしょう。
さらに、ブルームバーグは8日、米露間のウクライナ停戦案を巡り、プーチン大統領がウクライナ東部のドンバス全域(ドネツク州、ルハンシク州)とクリミア半島のロシアへの割譲を要求していると伝えました。ルハンシク州に関しては、今年6月にロシア側の行政トップが全域を「完全に制圧した」と主張しています。これらの情報から、ロシアが停戦と引き換えに実質的な領土拡大を狙っていることが浮き彫りになります。
ウクライナの断固たる反発と防衛線の危機
一方、ウクライナにとって、停戦と引き換えに領土を失うという提案は受け入れがたい厳しい内容です。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は9日、「ウクライナ国民は、占領者に自らの土地を譲り渡すことはない」と強く反発しました。これは、ロシアの領土要求に対するウクライナの断固たる拒否姿勢を示すものです。
ウクライナの領土問題を巡る米露首脳会談の緊迫した交渉の様子
米国の戦争研究所(ISW)は8日、もしウクライナがドネツク州から撤退した場合、これまでロシア軍の猛攻に耐え抜いてきた強固な防衛線を失うことになると分析しています。これは、将来的にロシア軍が再び侵攻してきた際に、ウクライナが極めて不利な状況に陥るリスクを意味しており、領土の割譲が単なる停戦以上の深刻な影響をもたらす可能性を示唆しています。
停戦後も続くプーチン氏の強硬姿勢と領土要求
ウォール・ストリート・ジャーナル(8日付)によると、プーチン大統領はドネツク州からのウクライナ軍撤退を条件に、南部ザポリージャ州とヘルソン州における現在の戦線での停戦を提案しているとされます。しかし、これは両州の完全な支配を断念したわけではなく、領土交換によって実現を目指すとみられています。どの領土がウクライナに返還されるのかという点については、現時点では極めて不透明です。
ロシアのプーチン大統領がウクライナへの強硬姿勢を維持し、今後の停戦交渉の行方を示唆する様子
もともとロシアは、2014年に併合を宣言したクリミア半島に加え、2022年に併合を宣言した東部ドネツク州、ルハンシク州、南部ザポリージャ州、ヘルソン州の計5地域をロシア領と認めることが和平の条件であると主張してきました。プーチン大統領は、今回の提案が段階的なものであるとしても、今後もこの強硬な領土要求姿勢を貫くものとみられます。これは、ロシアがウクライナにおける自国の支配を最終的な目標としていることを強く示唆しています。
米露首脳会談、領土問題で続くギリギリの駆け引き
プーチン大統領の提案を巡っては、ヨーロッパ諸国からも強い懸念の声が上がっています。南部2州での戦闘停止を約束するだけで、ロシアがウクライナ東部を手中に収めることになりかねないからです。また、南部2州での停戦監視を誰が担うのかという具体的な問題も残されています。ウクライナも断固として反発する中、15日の米露首脳会談が開催されるぎりぎりまで、領土問題を巡る激しい駆け引きが続くことは必至です。
ウクライナ領土問題に関する各国の駆け引きと、今後も続く交渉の展望を示すニュース映像の一部
プーチン大統領はウクライナ侵攻の「根本原因の解決」が必要だと繰り返し訴えており、最終的にはウクライナを自国の支配下に置くことが目標であると推測されます。今回の直接会談を絶好の機会と捉え、トランプ氏を取り込みながら欧米の分断を図り、交渉を有利に進めたい構えを強めています。
この米露首脳会談は、ウクライナ紛争の今後の展開、ひいては国際秩序に大きな影響を与えることになります。各国の思惑が交錯する中、領土問題の解決に向けた道筋は見通しが立たず、世界の注目が集中しています。
参考文献
- ウォール・ストリート・ジャーナル (8月8日付)
- ブルームバーグ (8月8日付)
- 米・戦争研究所 (8月8日付)
- 日テレNEWS NNN