高市首相、少数与党戦略で「年収の壁」引き上げなど合意形成

12月17日の臨時国会閉会後の総理会見で、高市早苗首相は連立相手である日本維新の会に加え、国民民主党、公明党との連携に言及しました。これは、少数与党体制を率いる高市首相の巧みな戦略の一環であり、主要政策の実現に向けた動きとして注目されています。

国民民主党との「年収の壁」合意と政策提携

高市首相は、日本維新の会との広範な連立政権合意を基盤としつつ、国民民主党との政策提案を柔軟に取り入れました。特に、補正予算に盛り込まれた「ガソリン暫定税率の廃止」に加え、12月18日には「103万円の年収の壁」を178万円まで引き上げることで国民民主党と合意に達しました。国民民主党の玉木雄一郎代表は、この合意を「国民の皆様から託されたミッションがコンプリートされた」と高く評価しています。

「年収の壁」引き上げ合意書に署名する高市早苗首相と玉木雄一郎代表「年収の壁」引き上げ合意書に署名する高市早苗首相と玉木雄一郎代表

公明党との連携強化と支援策

高市首相は公明党とも緊密に連携し、子ども1人当たり2万円の応援手当や、来年1月から3月までの電気・ガス代補助を補正予算に盛り込みました。さらに、自民党、日本維新の会、公明党の3党は、来年4月に始まる小学校の給食無償化に関する制度設計で、児童1人当たり月額5200円の支援を実施することでも合意しました。これらの政策は、生活支援や子育て支援を重視する姿勢を示すものです。

多数派形成への道筋と政治基盤

連立を組む自民党と日本維新の会に、国民民主党と公明党を加えることで、衆議院では定数465議席のうち284議席、参議院では定数248議席のうち165議席を確保し、それぞれ過半数を制する形となります。これは、少数与党となった自民党を率いる高市首相にとって、政策推進の安定的な基盤を築く「妙手」と言えるでしょう。

公明党の連立離脱と政治資金問題の影響

高市体制は今年10月に発足し、長年連立を組んできた公明党から日本維新の会へとパートナーを変更しました。1999年から連立を組んできた公明党は、時に「ゲタの雪」と例えられ、自民党から離れることはないと思われていました。しかし、公明党の斉藤鉄夫代表は10月10日、2023年末に発覚した旧安倍派のパーティー券問題に端を発する「政治とカネ」の問題を理由に、自民党との連立からの離脱を宣言しました。

2024年10月の衆院選で自民党が67議席、2025年7月の参院選で13議席を減らした一方で、公明党も衆院選で8議席、参院選で6議席を減少させました。全国の支持者からは「もう自民党を応援するのは嫌だ」との声が多数寄せられたことが、斉藤代表の決断の背景にあるとされています。

高市首相は、これらの政治的変動の中、柔軟な政党間連携を通じて政策課題の解決と政権運営の安定化を図ろうとしています。