トランプ大統領、中国に米国産大豆4倍増要求の真意は?市場反応と専門家の見方

トランプ米大統領は10日、自身のソーシャルネットワーキングサービス(SNS)に投稿し、中国に対し米国産大豆の購入量を4倍に増やすよう強く希望する意向を表明しました。この投稿を受けて米大豆先物価格は上昇しましたが、市場アナリストからは、その実現性に対する懐疑的な声が上がっています。世界的な大豆市場の動向と米中貿易関係の複雑さが改めて浮き彫りになる中、今後の展開が注目されます。

トランプ大統領はSNSへの投稿で、「中国は大豆不足を心配している。わが国の偉大な農家は、最も丈夫な大豆を生産している。中国が早急に大豆の注文を4倍にしてくれることを願っている」と述べました。さらに「迅速なサービスを提供する。ありがとう、習近平国家主席」と付け加え、中国との貿易関係における自身の立場を強調しました。この発言は、米国産農産物、特に大豆の対中輸出拡大への強い期待を示唆しています。

トランプ大統領のSNS投稿を受け、シカゴ商品取引所(CBOT)の大豆先物の中心限月は急騰しました。日本時間午後3時37分(0637GMT)時点で、1ブッシェルあたり10.18ドル、前日比2.38%高を記録しました。これは、世界最大の輸出国である米国と、最大輸入国である中国の間の農産物貿易に関する発言が、即座に市場に影響を与えることを示しています。

北京のウォルマートで買い物をする人々。2019年9月、中国の大豆需要と食料品市場の活況を示す象徴的な光景。北京のウォルマートで買い物をする人々。2019年9月、中国の大豆需要と食料品市場の活況を示す象徴的な光景。

中国は世界最大の大豆輸入国であり、昨年は約1億0500万トンを輸入しました。そのうち米国産は全体の4分の1弱に過ぎず、残りの大部分はブラジル産に依存しています。もしトランプ大統領の希望通りに4倍に増やすとなると、中国の大豆輸入量のほぼ全てを米国産で賄うことになり、現在の国際的なサプライチェーンに大きな変化をもたらすことになります。アグレーダー・コンサルティング(北京)の創業者であるジョニー・シャン氏は、この目標について「中国が通常の4倍の量の大豆を米国から購入する可能性は極めて低い」と指摘し、現実的な見方を示しました。

米中両国は7月下旬にストックホルムで開催された閣僚級協議において、相互に一時停止している関税措置の停止期間を8月12日からさらに90日間延長する方針を確認しています。しかし、中国が米国産大豆の輸入を大幅に拡大することがこの関税停止期間延長の条件となっているのかどうかは、現時点では不明です。中国商務省は、この件に関するロイターからのコメント要請に応じていません。過去を振り返ると、第1次トランプ政権時代に米中が締結した「通商合意第1弾」においても、中国は「大豆を含む米国産農産物の輸入を拡大する」と合意しましたが、最終的にその目標を大きく下回る結果となりました。

近年、中国は米国産大豆への依存度を着実に引き下げ、南米諸国からの調達にシフトする動きを強めています。今年に入っても、中国が第4・四半期に米国産大豆を購入する明確な動きは見られていません。米国の大豆生産者たちは、中国に匹敵する代替売却先を積極的に模索していますが、現状では中国市場の規模と重要性に並ぶ国は見当たらず、この状況が大豆農家にとって大きな課題となっています。

今回のトランプ大統領の発言は、米中間の貿易交渉、特に農産物分野における複雑な力関係を再び浮き彫りにしました。市場は一時的に反応したものの、専門家の懐疑的な見方や中国の過去の行動、そして戦略的な調達先の多様化を考慮すると、米国産大豆の輸入量4倍増という目標の達成には多くの障壁が存在すると考えられます。今後の米中間の対話と、それが世界の大豆市場に与える影響が引き続き注視されるでしょう。

出典:

ロイター通信 (2025年 ロイター/Tingshu Wang)