「ルフィ」と名乗る指示役による広域強盗事件を巡り、東京地裁で下された判決と、関係者の証言が日本の裏社会に新たな光を当てています。特に注目されたのは、闇バイトで実行役を集めたとして強盗傷害ほう助罪などに問われたグループ幹部、小島智信被告(47)が公判で赤裸々に語った組織の実態です。この証言により、近年台頭する匿名・流動型犯罪グループ、通称「トクリュウ」と、従来のヤクザ組織との根本的な違いが浮き彫りになりました。
裁判で明かされた「トクリュウ」の組織実態
小島被告の証言によれば、一連の事件の主犯格とされる渡邉優樹被告(41)と今村磨人被告(41)は、もともと敵対関係にあったとされます。渡邉被告がトップ、小島被告がナンバー2の地位にあった特殊詐欺グループは2021年4月、フィリピン当局の摘発を受け、入管施設に収容されました。そこに、別の特殊詐欺グループのトップであった今村被告も収容されており、渡邉被告らは今村被告の「ビジネス」を乗っ取ろうと画策し、関係修復を装って接近したという経緯が語られました。この内幕が明かされたことで、組織内部の人間関係が流動的で、既存のヤクザ組織とは異なる性質を持つ「トクリュウ」の実態が垣間見えました。
ヤクザ組織との決定的な相違点
今回の公判で浮き彫りになったのは、「トクリュウ」とヤクザ組織との間に存在する複数の決定的な相違点です。
内部情報の口の堅さの違い
従来のヤクザ組織の構成員が、捜査当局の取り調べや裁判で組織の内幕、特に上層部の関与について赤裸々に語ることは極めて稀です。自分の不利益を甘受してでも口を閉ざすのが鉄則とされ、これが組織維持の重要な柱となっていました。しかし、小島被告が詳細を語ったことは、「トクリュウ」にはヤクザのような強固な結束や「掟」が存在しないことを示唆しています。彼らは自己保身のためであれば、組織の実態を簡単に明かす傾向にあるのです。
「公然組織」と「匿名性」の対比
新聞やテレビで頻繁に名前が報じられ、本部事務所の場所まで知られているヤクザは、半ば「公然組織」とも言える存在です。特に都道府県公安委員会が指定する「指定暴力団」に至っては、完全に公然組織と位置づけられます。ヤクザは、その公然たる「威容」を背景に地上げや公共事業の利権介入など、グレー領域のビジネスを展開してきました。組織の威容がシノギを有利に進めるための利点であったため、構成員は組織の秘密を守ることに価値を見出していました。
特殊詐欺グループ「トクリュウ」に対する警察の徹底した捜査活動が続く様子
対照的に、「トクリュウ」は「匿名性」を最大の武器としています。彼らは特定の事務所を持たず、メンバー間のつながりも流動的で、実態が掴みにくいのが特徴です。この匿名性ゆえに警察の監視下に置かれにくく、従来のヤクザ組織が抱える行動の自由度制限とは無縁の活動が可能となっています。
時代の変化と犯罪組織の変容
時代は変化し、暴力団対策法や暴力団排除条例の施行により、ヤクザ組織を取り巻く環境は厳しさを増しています。暴排機運の高まりの中で、ヤクザ組織の「威容」が活きるグレー領域のビジネスは大きく減少し、公然たる存在であるがゆえに警察の監視下に置かれ、行動の自由度がどんどん狭まっています。このような背景から、旧来の組織体系を持たず、インターネットを通じて不特定多数の人間を募り、特定の拠点を持たない「トクリュウ」が台頭してきました。彼らは時代の変化に適応した、新しい形の犯罪組織として、従来のヤクザとは異なる脅威を社会に及ぼしています。
結論
今回の「ルフィ事件」を巡る公判での証言は、「トクリュウ」が従来のヤクザ組織とは根本的に異なる特性を持つ犯罪集団であることを明確にしました。彼らの匿名性、流動性、そしてメンバーの倫理観の欠如は、捜査当局にとって新たな課題を突きつけています。社会全体の安全を守るためには、この新しい形態の犯罪組織に対する理解を深め、対策を講じることが喫緊の課題となっています。
参考文献:
- Yahoo!ニュース: 公判で分かったトクリュウとヤクザ組織の違い (元記事)
https://news.yahoo.co.jp/articles/1400d4281b06d63e12450f7d78531c9b8774a229 - デイリー新潮: 【写真11枚】露出度の高い“挑発的なドレス”をまとうマニラの「美人ホステス」 ルフィが豪遊したパブでの実際の写真をみる
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/02011147/?photo=2