パレスチナ自治区ガザ北部で8月10日夜、イスラエル軍による空爆が発生し、ジャーナリストを含む7人が犠牲となりました。この攻撃は、ガザ市内の病院近くに設けられた報道関係者の拠点を狙ったもので、中東の主要放送局アルジャジーラは、同局の記者4人を含むスタッフ5人が死亡したと発表しています。特に注目されるのは、イスラエル軍がジャーナリストのアナス・アル・シャリフ氏(28)を狙ったと認め、彼がイスラム過激派組織ハマスのメンバーであったと主張している点です。
ガザ市にて、イスラエル軍の空爆で命を落としたアルジャジーラ記者アナス・アル・シャリフ氏(2024年8月撮影、REUTERS/Dawoud Abu Alkas提供)。
イスラエル軍とアルジャジーラ、主張の対立
イスラエル軍の主張に対し、アルジャジーラはこれを強く否定し、攻撃を非難する声明を発表しました。また、国連事務総長もこの空爆について、ジャーナリストの安全が保護されるべきであると強調し、独立した公平な調査を求める事態となっています。これは、報道の自由と紛争地帯におけるメディア関係者の保護という国際的な議論を再び浮上させています。
殺害された記者の「最後のメッセージ」
こうした状況の中、殺害されたアナス・アル・シャリフ記者のX(旧ツイッター)アカウントに「最後のメッセージ」と題された遺書が投稿され、波紋を呼んでいます。アルジャジーラによれば、このメッセージは生前の4月6日に、イスラエルによる暗殺の脅威を感じていた彼自身が、万一の事態に備えて用意していたものだといいます。
戦争が始まって以来、ガザ北部から現地の状況を精力的に世界に発信し続けてきたアル・シャリフ氏の言葉は、その使命感と現実の厳しさを物語っています。
「ガザを忘れないでください」:その言葉が問いかけるもの
彼の「最後のメッセージ」の一部は以下の通りです。
「このメッセージがあなた方のもとへ届いているとするなら、イスラエルは私を殺し、私の口を封じることに成功したのです。(イスラム教の神)アッラーが私の命を延ばしてくださり、家族や愛する人々とともに、(イスラエル)占領下の故郷アシュケロンに戻ることができればと願っていました。しかし、アッラーの御心が優先され、その定めは絶対です。」
この言葉は、紛争地でジャーナリズムの使命を全うしようとする人々の危険な現実と、彼らが抱く故郷への強い思い、そして「ガザを忘れないでください」という切実な願いを世界に訴えかけています。アル・シャリフ氏の死と彼の残したメッセージは、国際社会に対し、ガザの状況とジャーナリストの保護について深く再考を促すこととなるでしょう。