マクドナルドが提供する「ハッピーセット」の販売方法を巡り、同社に対する批判が殺到し、最終的には公式ウェブサイトに「お詫び」を掲載する事態に追い込まれました。この問題は、単なる販売トラブルに留まらず、子どもたち、そして社会全体に「不幸」をもたらしている点が、大きな議論を呼んでいます。特に、愛好家の間で価値が高騰している「ポケモンカード」が景品として付いたことで、販売店舗には大人が殺到し、多くの店舗で早期に配布が終了。ハッピーセットのメインターゲットである子どもたちが購入できないという事態が頻発しました。
「ハッピーセット」が子どもを遠ざけた理由:高騰するポケモンカードと転売問題
今回の騒動の核心は、2025年8月8日から11日にかけて発売されたハッピーセットに、市場価値が急騰している「ポケモンカード」が封入されていたことにあります。この特典目当てに、転売目的の購入者や大人たちが店舗に殺到。結果として、多くの子どもたちは楽しみにしていたハッピーセット、ひいてはポケモンカードを手に入れることができませんでした。
ウェブメディア『ENCOUNT』の記事によると、ある店舗では数名の外国人客がハッピーセットを25個も大量に注文し、食べ物を店内に放置して景品のカードとおもちゃだけを持ち去る様子が報じられました。その光景を、列に並んで待っていた小学生たちが悔しそうな表情で見つめていたといいます。
この「子どもが買えないハッピーセット」問題は、今回が初めてではありません。これまでに「星のカービィ」「ちいかわ」「Minecraft(マインクラフト)」など、人気キャラクターとのコラボレーションセットでも同様に早期完売が繰り返されてきました。SNS上には、これらのおもちゃを大量に買い占める大人の姿が投稿され、「転売ヤーを取り締まれ」「外国人を追い出せ」といった強い批判の声が上がっています。
マクドナルドのハッピーセットに付属し、高騰した人気「ポケモンカード」のイラスト。大人による買い占め問題の核心
食品廃棄問題への懸念:マクドナルドの理念と現実の乖離
この騒動で多くの人々を不幸な気持ちにさせているもう一つの深刻な側面は、「ハッピーセットの大量廃棄」問題です。おもちゃの獲得のみを目的としてハッピーセットを多数購入する人々は、当然ながら全てのハンバーガーやポテトを食べきることができず、手付かずのまま捨てていくケースが後を絶ちません。SNS上では、店内のゴミ箱に「おもちゃだけ抜き取られたハッピーセット」が山積みにされている写真が多数投稿され、社会的な怒りを買っています。
相次ぐ物価高騰と、なかなか上昇しない賃金に苦しむ人々にとって、食費を切り詰めて生活している中で目にする食品の大量廃棄は、強い憤りを感じさせる光景です。また、食品ロス削減に真剣に取り組んでいる人々にとっては、自分たちの努力を嘲笑うかのような行為に無力感を抱かせるものです。
この「不幸な気持ち」は、マクドナルドの店舗で働くクルーたちも同様に感じているでしょう。マクドナルドは、2050年までに店舗、オフィス、サプライチェーン全体でネット・ゼロ・エミッションを達成するという野心的な目標を掲げ、常日頃から「食品ロス削減」に積極的に取り組んでいることを公言しています。例えば、顧客からの注文を受けてから調理する「Made for You」システムを導入したことで、約50%の商品廃棄削減を達成し、2017年には「食品産業もったいない大賞 農林水産省食料産業局長賞」を受賞するほどの先進企業として評価されています。
しかし、その「食品ロス削減先進企業」であるはずの現場で、手付かずのハンバーガーやポテトが大量に廃棄されている。しかもそれが「ハッピーセット」という、本来は幸せをもたらすはずの商品で発生していることは、皮肉以外の何物でもありません。食品ロス削減に日々励むマクドナルドのクルーたちは、さぞ脱力感を覚えたことでしょう。
捨てられた大量のハッピーセットの食品。ポケモンカード目当ての購入者による食品ロス問題を示す
今回のマクドナルド「ハッピーセット」騒動は、単に人気商品が手に入りにくくなったという話に留まらず、子どもたちの純粋な期待を裏切り、深刻な食品廃棄問題を引き起こし、さらには企業の理念と現実との乖離を露呈させました。ハッピーセットがもたらすべき「幸せ」が、多くの人々にとって「不幸」の連鎖を生み出してしまった現状に対し、企業は根本的な解決策を講じることが急務となっています。
参考文献
- ENCOUNT. 「『小学生泣いてた』外国人がハッピーセット買い占め…マクドナルド“杜撰対応”に現役クルーも苦言」. 2025年8月10日. (元記事の情報に基づくため日付は記載のまま)
- Yahoo!ニュース. 「マック騒動の現場、ハッピーセットが捨てられた」. 2025年8月13日.