日本維新の会新体制、橋下徹氏の「影」が挙党一致の障壁となるか

日本維新の会の新たな執行部が発足し、吉村洋文代表(大阪府知事)は「挙党一致」を掲げ党運営に臨んでいます。しかし、党創設者である橋下徹元大阪府知事の存在が、新体制のリスク要因として指摘されています。特に「副首都構想」の実現に向けた自民・公明両党との連立論が橋下氏の発言を機に浮上したことは、その影響力を如実に示しています。党内には約10年前に政界を引退した橋下氏を慕う議員が少なくない一方で、選挙で選ばれていない「部外者」の介入に反発の声もあり、「橋下院政」との疑念を払拭できなければ、吉村体制下での真の挙党一致は困難を極めるでしょう。

橋下氏、連立を提言し波紋広がる「副首都構想」実現へ

参院選の翌日、7月21日のテレビ番組に出演した橋下氏は、自民・公明両党が衆参両院で過半数を割った現状を踏まえ、「自民、公明は弱っている。副首都構想一本に絞って、連立を組んだらいい」と踏み込んだ発言をしました。この発言は、永田町に大きな波紋を広げることになります。副首都構想は、東京一極集中の是正や、大規模災害時などにおける首都機能代替を目的とする維新の基幹政策です。統治機構改革を通じて地方分権・多極型社会への移行を目指す日本維新の会にとって、まさに原点ともいえる目玉政策であり、吉村代表はこの実現に向けた法案作成を指示しています。

日本維新の会創設者の橋下徹氏と吉村洋文代表日本維新の会創設者の橋下徹氏と吉村洋文代表

「橋下チルドレン」を中心に連立容認論が拡大

橋下氏の連立入りに関する発言後、地域政党である「大阪維新の会」内部では連立容認論が急速に広がりました。大阪府議団の河崎大樹代表は「実現できるなら、手段はより可能性が高まる方がいい」と積極的な賛同を示し、横山英幸代表代行(大阪市長)も「あらゆる選択肢は取るべきだ」と述べています。河崎氏は橋下氏が大阪府知事を務めていた際の特別秘書であり、横山氏も橋下氏が大阪維新代表だった平成23年に府議に当選した「橋下チルドレン」の一人です。大阪の地方議員や、地方議員出身の国会議員の中には、以前から橋下氏の主張に深く共鳴する層が少なくなく、今回の連立容認論の広がりも、その根強い影響力と無関係ではないとみられています。

過去にも見られた橋下氏の強い影響力

橋下氏が党運営に与える影響は、今回が初めてではありません。昨年の衆院選で維新が議席を減らした際、橋下氏は自身のX(旧ツイッター)で、当時の馬場伸幸代表時代の国会対応を「飲み食い政治」と厳しく批判し、「代表選はマスト」と発信しました。この発言がきっかけとなり、維新の所属議員は代表選実施を決定し、吉村氏が代表に選出されることになります。その後、党内で飲食費の上限を設けるなどルールが整備されたことも、橋下氏の提言に沿う形となりました。さらに、兵庫県知事の告発文書問題に関連し、情報漏洩に関与した県議2人の処分内容を巡っても、橋下氏がXで「逆、逆」と投稿した直後、当初検討されていた2人の処分の軽重が指摘通りに逆転した経緯があり、その影響力の大きさが改めて浮き彫りになりました。

日本維新の会の新体制が目指す「挙党一致」は、党創設者である橋下徹氏の「院政」という疑念をいかに払拭するかにかかっています。外部からの影響力を適切にコントロールし、吉村代表がリーダーシップを明確に示すことができるかが、今後の党運営における重要な課題となるでしょう。