「短時間正社員」制度が、経済財政運営と改革の基本方針「骨太方針2025」に明確に盛り込まれ、日本の労働市場に新たな柔軟性をもたらすと期待されています。多様な働き方の推進は、現代社会の課題解決に不可欠とされますが、この制度にはフルタイム正社員からの「不平等」との声も存在します。本記事では、短時間正社員の具体的な定義と現状を解説し、その社会的な意義や、労働時間の「平等」という概念に対する再考の必要性について深掘りします。
「短時間正社員」の定義と現状
厚生労働省の定義によれば、「短時間正社員」はフルタイム正社員より所定労働時間が短く、無期雇用契約を結び、時間当たりの賃金や待遇が同等である正規型の社員を指します。これにより、労働時間の柔軟性を確保しつつ、正社員としての安定した地位が保証されます。
ノートパソコンで働く短時間正社員のイメージ。柔軟な働き方とワークライフバランスを示す
令和5年度(2023年度)の雇用均等基本調査では、短時間正社員制度の利用率はわずか3.2%に留まり、週40時間勤務が依然として正社員の主流です。利用者の81.6%が女性であることから、育児や介護と仕事の両立支援に主に用いられている実態が伺えます。育児・介護休業法に基づき1日6時間勤務を選択した場合、週30時間勤務となり、フルタイムより週10時間短い労働時間となります。年間で約520時間もの差が生じ、これがフルタイムの同僚に「不平等」と感じさせる要因ともなっています。
「不平等感」を乗り越える社会的価値
フルタイム正社員が短時間正社員に対し抱く「不平等感」は、労働時間の差に起因します。「同じ正社員なのに労働時間が違うのはズルい」という感覚は理解できますが、従来の「正社員は一律週40時間勤務が原則」という常識が、現代における真の「平等」を定義しているか、という問いかけが重要です。
労働時間だけで「平等」を測ることは、個人の生産性や業務の性質を考慮しない一面的な見方となり得ます。同じ時間働いても、業務の効率性や専門性などによって生み出される成果は人それぞれです。成果主義の視点からは、単なる労働時間の長さが公平性の唯一の基準とは言えません。
短時間正社員制度は、育児・介護に加え、病気治療、自己研鑽、地域活動への参加など、多様なライフステージやニーズに対応し、労働市場に優秀な人材を維持する有効な手段です。
笑顔で在宅勤務をするビジネスパーソン。短時間正社員制度によるワークライフバランスの向上
石破首相も2025年11月の所信表明演説でその活用を促しています。この制度が社会に広く受け入れられることで、個人のウェルビーイング向上、企業の人材確保・活用、労働生産性全体の向上、そして経済の活性化に寄与するでしょう。これこそが、従来の働き方の常識に風穴を開け、社会に還元される真のメリットと言えるでしょう。
結論
「短時間正社員」制度は、単なる福利厚生に留まらず、労働力不足や多様なニーズに対応するための重要な政策ツールです。フルタイム正社員が抱く「不平等感」は、従来の「労働時間=平等」という固定観念から生じがちですが、真の平等とは、個々の状況に応じた柔軟な働き方を尊重し、それぞれが能力を最大限に発揮できる機会を提供することにあると考えるべきです。この制度が社会全体で理解され、適切に運用されることで、より公平で活力ある社会の実現に繋がるでしょう。
参考情報
- 本記事は、Yahoo!ニュースの以下の記事を基に作成しました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/fa2b0f966cbed4cb73426c4ac2003b2fb25e90c3