ドナルド・トランプ前米国大統領が「プーチン(露大統領)は私のために交渉を望んでいると考える」と発言し、その真意と国際社会への影響が注目されています。この発言は、ウクライナ戦争の和平交渉におけるトランプ氏の役割と、彼がノーベル平和賞受賞に期待を寄せていることを示唆しています。生中継用マイクがオンになっていることに気づかないまま収録されたこの「ホットマイク」発言は、その後の外交会談の評価にも複雑な影を落としています。
「ホットマイク」が捉えた発言の真相
トランプ前大統領の発言は、ホワイトハウスで行われたウクライナのゼレンスキー大統領との会談に続く欧州首脳7人との会談に先立ち、フランスのマクロン大統領と対話している最中に記録されました。彼はマクロン大統領に対し、「彼(プーチン)は交渉を望み、私のために交渉を望むと考える。とんでもない話のようだが何の話かわかるでしょう?」と述べました。この発言は、トランプ氏が15日にアラスカでプーチン大統領と首脳会談を行った直後に行われたもので、和平交渉における自身の貢献を強調する意図があったとみられています。ホワイトハウスは、この発言について具体的な見解を示していません。
トランプ大統領とマクロン大統領、ゼレンスキー大統領がホワイトハウスで欧州首脳らと会談に参加する様子。
ウクライナ和平交渉案の詳細と背景
トランプ前大統領は、ゼレンスキー大統領との首脳会談後の多国間会談で、ウクライナが領土の一部を放棄する代わりに、米国と北大西洋条約機構(NATO)からの安全保障を得るという協議案を公開しました。彼は「プーチン大統領はウクライナに対する(西側の)安全保障を受け入れると同意した。私たちはまた、現在の戦線を考慮して領土交換の可能性について議論しなければならない」と発言。さらに、領土譲歩の条件については「これは非常に悲しい場面だが、結局ゼレンスキー大統領とウクライナ国民がプーチン大統領と協力して下さらなければならないだろう」と付け加えました。この提案は、アラスカでのプーチン大統領との会談で引き出した成果を自らの功績として誇示しようとする意図があると分析されています。
欧州首脳の反応と「NATO5条方式」
会談に参加した欧州の7人の首脳は、トランプ前大統領が公開した協議案に対し、一斉に賛辞を送りました。英国のスターマー首相は「この日の会談はウクライナと欧州の安全保障に向けた歴史的な段階になるだろう」と述べ、「トランプ大統領が『NATO5条方式』の安全保障を示唆したことは欧州がこの数カ月間にやってきた作業と一致する」と評価しました。NATO5条とは、加盟国への攻撃をすべての同盟国への攻撃と見なし、相互措置を取ることを定めた条項です。トランプ氏は、プーチン氏が反対してきたウクライナのNATO加盟の代わりに、この条項のみを適用する方式を提案し、その受け入れ意向を引き出したと主張しています。NATOのルッテ事務総長も、「ウクライナの安全保障に対する米国の支援を提案したことは平和確保の突破口であり、すべてを変えるもの。トランプ大統領が膠着状態を破り、プーチン大統領を平和会談に成功裏に引き出したことに対し感謝する」と述べ、トランプ氏の功績を称えました。
米メディアが示す懐疑的な視点
欧州首脳からの賛辞が続く中、トランプ前大統領は「私が終わらせた6つの戦争でも停戦はなかったが、すべてが終わった後には平和協定の締結が非常に現実的で、近い将来に実現可能だろう。もう私が関与したすべての戦争のうち、この戦争(ウクライナ戦争)だけ残った」と主張し、次の段階としてロシアを含めた3者会談に集中していると付け加えました。
しかし、米メディアはこうしたトランプ氏の発言や欧州首脳の反応に対し、懐疑的な見方を示しています。ニューヨーク・タイムズは、欧州首脳の賛辞について「トランプ内閣でするものと比較するほどではないが、彼らは明らかにお世辞の技術を身につけたようだ」と皮肉り、ゼレンスキー大統領も「毎瞬間にトランプを賞賛しなくてはならないという教訓を得たようだ」と評価しました。また、トランプ氏の「ウクライナ戦争が最後の戦争」という主張に対しては、「彼はすでにイスラエルとハマスの間で今も起きている状況を忘れているようだ」と指摘しました。CNNも、「ウクライナは強力な軍隊で未来のロシアの攻撃を抑止しなければならず、欧州は安全保障上最も大きいロシアの脅威を解消しなければならないが、プーチンはウクライナの領土を確保すると同時にウクライナの西側編入を破壊しようとする。勝利で包装する迅速な平和を望むトランプ大統領はこのすべての側面を調和させることができてこそノーベル平和賞を贈られる資格ができるだろう」と述べ、和平達成の困難さを強調しました。
結論
トランプ前大統領の「ホットマイク」発言は、ウクライナ和平交渉における彼の積極的な関与と、プーチン大統領との間で交わされたとされる協議内容を明らかにしました。欧州首脳からは期待と賛辞が寄せられましたが、米メディアはトランプ氏の発言の背景にある個人的な動機や、和平達成の複雑さに対し冷静かつ批判的な視点を示しています。ウクライナ戦争の行方、そしてトランプ氏の今後の国際舞台での動向は、引き続き世界中で注目されることでしょう。
参考資料
- Source link (Yahoo!ニュース – 聯合ニュース)
- 【写真】欧州首脳と会談するトランプ大統領 (中央日報日本語版)