トランプ米大統領、ウクライナ安全保障における地上部隊派遣を否定 – 空軍支援の可能性示唆

トランプ米大統領は19日、米国がウクライナに提供する「安全の保証」に関して、米軍の地上部隊を派遣する可能性を明確に否定しました。これはウクライナ戦争の和平合意に向けた動きの中で、米国の関与のあり方を示す重要な表明となります。一方で、同大統領は空軍を通じた支援の可能性には言及しており、米国が軍事支援の形態を限定する姿勢を示しています。

米国の安全保障支援に関するトランプ大統領の声明

トランプ大統領は18日にホワイトハウスでウクライナのゼレンスキー大統領と会談し、ウクライナ戦争終結に向けたいかなる合意においても、米国がウクライナの安全保証を「支援する」と表明しました。翌日、FOXニュースとのインタビューで、この「安全の保証」における米国の役割について詳細を語り、「安全保証に関しては、(欧州諸国は)地上部隊の派遣に前向きだ。われわれは特に空軍による支援などを通じ、彼らを支援する用意がある」と述べました。この発言は、米国が直接的な地上での軍事介入を避ける方針であることを示唆しています。ホワイトハウスのレビット報道官も、空軍による支援が「選択肢かつ可能性」であることを確認しましたが、具体的な内容には踏み込みませんでした。

米欧当局による「安全の保証」検討の進展

こうした動きと並行して、米国の当局者や関係筋は19日、米国と欧州の軍事計画担当者がウクライナの「安全の保証」について具体的な検討を開始したことを明らかにしました。国防総省は武器提供以外の側面で米国ができる支援について評価を進めているものの、軍事的に実現可能で、かつロシアが受け入れ可能な支援内容をまとめるには時間を要するとの見方を示しています。関係筋2人によると、北大西洋条約機構(NATO)軍ではなく、各国部隊として欧州軍をウクライナに派遣し、その指揮統制を米国が担う選択肢も検討されているとのことです。しかし、国防総省とNATOは現時点でコメントを控えています。ロシア外務省は、和平合意を支援するためのNATO諸国からの軍隊派遣を明確に拒否しており、今後の交渉の難しさを示唆しています。

トランプ米大統領がウクライナへの安全保障における米軍地上部隊派遣を否定する様子。アラスカ州での撮影風景。トランプ米大統領がウクライナへの安全保障における米軍地上部隊派遣を否定する様子。アラスカ州での撮影風景。

ロシアの反応とプーチン大統領の動向

トランプ大統領はFOXとのインタビューで、ロシアのプーチン大統領がウクライナ紛争の終結に向けた「ディール(取引)を望まない可能性もある」とし、今後2週間でプーチン氏の行動を評価する意向を示しました。プーチン氏が紛争終結に向けて前進することを望むとしながらも、合意に至らなければプーチン氏は「厳しい状況」に直面すると警告しました。トランプ氏はプーチン氏とゼレンスキー氏の会談、さらには自身も加わる3者会談の手配を開始する考えを表明していますが、ロシア側はこれまで、ロシア・ウクライナ首脳会談について明確なコミットメントを示していません。ロシアのラブロフ外相は19日、ウクライナ和平を巡るいかなる形式での協議も拒否しないとしつつも、首脳会談は「最大限の綿密さをもって準備されなければならない」と強調しました。

ウクライナでの戦闘は依然として続いており、終息の兆しは見えません。ウクライナのエネルギー省は19日、中部ポルタワ州のエネルギー施設が夜間にロシア軍の巡航ミサイルと無人機(ドローン)による攻撃を受け、大規模な火災が発生したと発表しました。ウクライナ当局者はこれを、ロシアのプーチン大統領が平和を望んでいないことの表れだと非難しています。一方で、この日、ロシアとウクライナは戦死した兵士の遺体を相互に返還しました。ウクライナ当局によると、ロシアはこの日、ウクライナ兵1000人の遺体を返還し、タス通信はロシアが返礼としてロシア兵19人の遺体を受け取ったと報じました。

活発化する国際外交活動

ウクライナを支援する「有志国連合」は同日協議を開き、ロシアへの圧力を強めるための追加制裁について議論しました。また、ウクライナへの安全の保証確保に向けた計画を進めるため、今後数日中に担当チームを米国に派遣し、会合を開くことで合意しました。ゼレンスキー大統領は自身のXへの投稿で、「有志国連合の全メンバー、特に米国と、安全保証の構造についてあらゆるレベルで具体的な作業に積極的に取り組んでいる」と述べ、国際社会との連携を強調しました。

NATOの軍事指導部は20日に会合を開き、ウクライナ問題を協議する見通しです。これに先立ち、ルッテNATO事務総長は19日、トルコのエルドアン大統領と電話会談を行い、ウクライナに対する実現可能で持続可能な安全の保証について協議しました。このほか、ルビオ米国務長官がトルコのフィダン外相と電話会談を行い、戦争終結に向けた措置などについて話し合うなど、ウクライナ情勢を巡る国際的な外交活動が活発に続いています。

結論

トランプ米大統領のウクライナへの地上部隊派遣否定は、米国のウクライナ安全保障への関与の範囲を明確に限定するものです。これは、国際社会がウクライナの安全をいかに確保し、紛争を終結させるかという複雑な課題において、新たな側面を提示しました。米欧当局は多角的な支援策を模索する一方で、ロシアは交渉の前提条件に慎重な姿勢を崩しておらず、戦闘は継続しています。国際社会の活発な外交努力が続く中で、ウクライナの未来を巡る議論は、今後も様々な側面から展開されていくでしょう。


参考文献:

  • Reuters