イスラエル政府高官が米国での未成年者に対する性犯罪のおとり捜査で逮捕された後、迅速に出国が許可された件について、米検察当局が隠蔽工作の疑惑を否定している。この事件は、米国内の政治家や世論の間で大きな議論を巻き起こしており、米国とイスラエルの関係性にも注目が集まっている。
ラスベガスでの衝撃的な逮捕劇
ニュースサイト「8NewsNow」が警察の文書を引用して報じたところによると、イスラエル国家サイバー総局の最高執行責任者(COO)であるトム・アルティオム・アレクサンドロビッチ氏(38)は、今月、米ネバダ州ラスベガスで拘束された。彼は15歳の少女とのデートだと思い待ち合わせ場所に現れたが、実際に対面したのは覆面捜査官だった。アレクサンドロビッチ氏はラスベガス・ストリップでシルク・ドゥ・ソレイユの観劇などのデートを楽しみ、コンドームまで持参していたという。彼はサイバーセキュリティ関連のイベント「Black Hat USA 2025」のためにラスベガスを訪れていた最中だった。
保釈と迅速な帰国、そして批判の嵐
アレクサンドロビッチ氏は未成年者を性行為に誘惑した罪で起訴され、8月27日に裁判所への出廷命令を受けた。しかし、彼はその直後に1万ドル(約148万円)の保釈金を支払い、釈放されるやいなやイスラエルに帰国した。通常、この種の罪は最長10年以下の拘禁刑を科される可能性があり、その人物の即時出国を認めた決定に対し、インターネット上では激しい批判が巻き起こった。
イスラエルの国旗が青空の下でなびいている様子。米国での政府高官逮捕事件に関連。
特に批判の先頭に立ったのは、共和党のマージョリー・テイラー・グリーン下院議員だ。ドナルド・トランプ元米大統領の熱心な支持者であるグリーン議員は、近年、パレスチナ自治区ガザ地区での紛争への対応を巡り、イスラエル政府に対して厳しく批判的な姿勢を見せている。彼女は自身のX(旧ツイッター)に、「(ベンヤミン・)ネタニヤフ首相のサイバー最高執行責任者を連行し、法の及ぶ限り起訴することは反ユダヤ主義に当たるのだろうか」と投稿。さらに「子どもに対する性犯罪者を逮捕した後、証拠もあり100%刑務所行きにも関わらず、すぐに釈放してイスラエルに帰国させるとは。米国はどうしてこれほどイスラエルに従属するようになったのだろうか? 子どもに対する性犯罪者がメキシコ人の場合でも、同じようにするだろうか?」と、米国の対応を強く非難した。
米国当局による隠蔽疑惑の否定
この騒動を受け、米国務省は、連邦政府が主要同盟国であるイスラエル高官に対して何らかの便宜を図ったという主張を強く否定した。国務省はソーシャルメディアへの投稿で、「国務省は、イスラエル国籍のトム・アルティオム・アレクサンドロビッチ被告がラスベガスで逮捕され、未成年者を性行為に誘惑したことに関連する罪で出廷を命じられたことを認識している」「彼は外交特権を主張しておらず、州裁判官によって保釈された。連邦政府が介入したという主張はすべて虚偽だ」と明言し、一連の手続きに連邦政府の関与はないと強調した。
さらに、クラーク郡のスティーブ・ウルフソン検事も19日、アレクサンドロビッチ氏の保釈について、特に異常な点はなかったと説明した。ウルフソン検事はラスベガス・レビュー・ジャーナル紙に対し、「この罪の標準的な保釈金は1万ドルだ。つまりこの罪で起訴された者が誰であろうと、その金額を支払えば無条件で釈放される。今回の事件もまさにその通りだった」と述べ、保釈が通常の法的手続きに則って行われたことを強調した。
まとめ
イスラエル政府高官の米国での逮捕と迅速な帰国を巡る疑惑は、米国内で大きな論争を巻き起こしたが、米国の検察当局は一貫して隠蔽工作の事実を否定している。これは、イスラエル高官が関わる性犯罪疑惑という国際的なセンシティブな問題であり、米国の司法プロセスと外交関係の透明性に対する議論を引き起こしている。米当局は手続きに異常はないと説明するが、世論の監視は今後も続くだろう。
参照元:
- AFP=時事
- ニュースサイト「8NewsNow」
- ラスベガス・レビュー・ジャーナル紙