バーンズ元CIA長官がトランプ政権の「独裁的報復」を非難:米国の安全保障への懸念

米中央情報局(CIA)のバーンズ前長官は20日、ドナルド・トランプ前大統領による連邦職員の大量解雇計画について、これを改革ではなく独裁的な「報復」と強く非難しました。同氏は、異論を封じ込めることを目的としたこうした措置が、ひいては米国の安全保障を損なう可能性への深刻な懸念を表明しています。この発言は、次期政権の動向と米国の官僚制の将来に対する重要な警鐘として注目されています。

バーンズ氏は米誌アトランティックに「米国の見捨てられた公務員への手紙」と題する文書を寄稿し、自身の見解を詳細に展開しました。その中で、彼は「改革の名の下で、公務員は公務と専門性に対する闘いの犠牲になった」と指摘。公務員が抜本的な改革の必要性を理解していると認めつつも、「これは改革ではなく報復だ」と断言しました。

恐怖と不信の種を蒔くことで国家の制度を破壊する行為は「独裁者の手法」に他ならないとバーンズ氏は述べ、トランプ氏の計画が「公務員を脅して服従させ、反対意見や都合の悪い懸念がない閉鎖的なシステムを作り上げようとしている」と厳しく批判しました。この動きは、政府機関の独立性と専門性を根底から揺るがしかねないとの危機感をにじませています。

バーンズ氏は、多様な政策観点の欠如が破滅的な結果をもたらした例として、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が2022年2月に開始したウクライナ全面侵攻を挙げました。この例を通じて、民主主義を守ることができなくなった弱体化した国家が、現在の米国に対する脅威になっているとの考えを示し、健全な政府運営には批判的な意見の存在が不可欠であると強調しました。

米国の連邦議会議事堂前で撮影されたバーンズ元CIA長官米国の連邦議会議事堂前で撮影されたバーンズ元CIA長官

バーンズ氏が示したこの見解について、米ホワイトハウスからは現時点でコメントは得られていません。バーンズ氏は、民主党のジョー・バイデン前大統領の下でCIA長官を務めたほか、長年の外交官としてのキャリアを持ち、駐ロシア大使や国務副長官も歴任するなど、米国の安全保障と外交政策における豊富な経験と専門知識を持つ人物です。彼の今回の発言は、次期米国政権における公務員制度のあり方、そして米国の民主主義と国家安全保障に与える影響について、広範な議論を喚起するものとなるでしょう。


参考文献