在インド・ロシア大使館の高官は8月20日、ロシアがインドへの石油供給を継続すると明言し、両国間の経済関係の強固さを強調しました。これは、国際的な政治情勢が変化する中でも、インドのエネルギー安全保障におけるロシアの重要性が増していることを示唆しています。
ロシア高官の発言と原油輸入量の変遷
在インド・ロシア大使館のロマン・バブーシキン代理大使は記者会見で、「政治状況にかかわらず、(インドのロシアからの)原油輸入量は同水準を維持することを強調したい」と述べ、供給の安定性を保証しました。ウクライナ戦争以前、インドの原油輸入全体に占めるロシア産原油の割合はわずか0.2%に過ぎませんでしたが、現在は35%にまで急増しており、ロシアがインドにとって最大の原油供給国となっている現状が浮き彫りになります。
国益と国際的な経済的課題への対応
バブーシキン代理大使はまた、インドとロシアが「国益」のために協力し、ドナルド・トランプ前大統領が提唱する関税措置などの経済的課題を克服する方法を見出すとの見解を示しました。これは、両国が国際貿易における潜在的な障壁に対し、戦略的な連携を通じて対応していく姿勢を示唆しています。
首脳会談と三国間協議の展望
外交面では、ロシアのプーチン大統領とインドのモディ首相による会談が年内に実現する見通しであることが明らかにされました。さらに、ロシア、インド、中国による三国間協議についても、バブーシキン代理大使は「その重要性に疑問の余地がないため、遅かれ早かれ再開されることを大いに期待している」と述べ、アジアにおける地政学的バランスを考慮した多国間協力の可能性に言及しました。
インドのモディ首相とロシアのプーチン大統領が会談する様子。印露間のエネルギー協力と地政学的関係強化の象徴。
貿易拡大とLNG供給の可能性
経済協力の観点では、通商担当高官がロシアとインドの貿易が年10%のペースで拡大すると予想していることを明らかにしました。これに加え、ロシアのデニス・マントゥロフ第1副首相はインタファクス通信に対し、ロシアがインドへの液化天然ガス(LNG)供給の余地があると考えていると述べ、「われわれは原油、石油製品、火力発電用炭、原料炭を含む燃料の輸送を継続している」としつつ、「ロシア産LNGの輸出には可能性があると見ている」と付け加えました。
ロシアのエフゲニー・グリバ副委員長(通商担当)は、インドにとってロシアからの原油購入は「非常に利益がある」ため、インドが原油供給元を変更したいとは思わないだろうとの見解を示し、ロシアがインドへの原油供給を継続するための「非常に特別なメカニズム」を有していると強調しました。
結論
今回のロシア高官の発言は、国際情勢が流動的である中でも、インドとロシアがエネルギー、貿易、そして地政学的な協力関係を深化させている現状を明確に示しています。特に、インドにとってロシア産原油の安定供給は経済的な利益とエネルギー安全保障の確保に直結しており、両国間の特別な関係は今後も継続・強化される見込みです。これは、アジア地域ひいては世界のエネルギー市場と国際政治における重要な動向として注目されます。
参考文献
- ロイター (2025年8月20日). 在インド・ロシア大使館高官、ロシアはインドへの石油供給を継続. (記事提供元: Yahoo!ニュース)