石破政権、逆境からの反転攻勢:内閣支持率回復と揺るがぬ続投支持

昨年10月の衆議院選挙、そして今年7月の参議院選挙を経て、自公両党は議席を大幅に減らし、衆参両院で過半数を維持することが困難になりました。この政局の背景には、2023年末から表面化した自民党の「政治とカネ」問題や、友党である公明党の高齢化問題など複数の要因が挙げられます。こうした状況を受け、一部の自民党議員からは、その責任を石破茂首相に帰し、総裁辞任を求める声が上がっていました。しかし、初期の厳しい状況から一転、石破政権は意外な回復力を見せ、国民からの続投支持を集め始めています。

TICAD(アフリカ開発会議)で演説する石破茂首相TICAD(アフリカ開発会議)で演説する石破茂首相

逆風下の石破政権:選挙での敗北と相次ぐ批判

石破首相自身にも、この逆境に対する責任の一端がありました。昨年の衆院選では、裏金問題に関与したとして非公認とした候補者が代表を務める政党支部に対し、2000万円の活動費を支給したことで批判を浴びました。さらに、物価高騰や「令和のコメ騒動」など、生活に直結する政策面での失敗も国民の不満を募らせる要因となりました。参院選の投開票直後に行われた読売新聞の世論調査では、内閣支持率が前月比10ポイント減の22%にまで下落。共同通信の調査でも9.6ポイント減の22.9%と、いずれも過去最低水準を更新し、多くの人々が石破政権に見切りをつけたかのように見えました。

最低水準からの支持率回復:世論調査に見る変化

しかし、その後、政局に奇妙な変化が生じ始めました。7月25日夕方には首相官邸前で「石破辞めるな!」デモが開催され、内閣支持率は上昇に転じる兆しを見せました。8月9〜11日に実施されたNHKの調査では、石破内閣の支持率は前回調査から7ポイント増の38%に回復。不支持率は8ポイント減の45%となり、石破首相の続投に対する「賛成」が49%で、「反対」の40%を上回る結果となりました。さらに、朝日新聞が8月16・17日に行った全国世論調査でも、石破首相の進退について「辞めるべき」が36%だったのに対し、「辞める必要はない」が過半数を超える54%に達しました。これは7月の同紙調査でも「辞める必要はない」(47%)が「辞めるべき」(41%)を上回っていた傾向をさらに強めるものでした。

平和へのメッセージで攻勢に出る石破首相

世論の支持回復を背景に、石破首相は「攻め」の姿勢に転じました。8月6日の広島平和記念式典では、被爆歌人である正田篠枝氏の「太き骨は先生ならむ そのそばに 小さきあたまの骨 あつまれり」という歌を引用し、深いメッセージを伝えました。続く9日の長崎平和祈念式典では、自身も被爆しながら被爆者の救護に尽力した永井隆博士の「ねがわくば、この浦上をして世界最後の原子野たらしめたまえ」という平和への願いが込められた言葉を引用。これらの発言は、自身の政治的立場だけでなく、日本のリーダーとして平和への強い決意を内外に示し、国民からの信頼回復に繋がる重要な機会となりました。

逆境に立たされた石破政権ですが、世論の予想を裏切る形で支持率を回復させ、首相自身も積極的な姿勢でリーダーシップを発揮し始めています。この反転攻勢が、今後の日本の政治にどのような影響を与えるか、引き続き注目が集まります。