神戸市中央区のマンションで8月20日に発生した会社員女性殺人事件は、日本社会に大きな衝撃を与えました。兵庫県警葺合署捜査本部は、東京都新宿区高田馬場に住む会社員・谷本将志容疑者(35)を22日、殺人容疑で逮捕。谷本容疑者は2022年にも神戸のマンションで別の女性を襲い殺人未遂容疑で逮捕されていた過去を隠し、東京で就職していました。借金による自己破産手続きを進める中で、お盆休みに神戸へ舞い戻り、再び凶行に及んだ可能性が浮上しています。この事件は、過去の犯罪歴を持つ人物による再犯の危険性、そして都市部における居住者の安全確保という喫緊の課題を提起しています。
神戸マンション殺人事件の発生と捜査の進展
事件は8月20日午後7時20分ごろに発生しました。神戸市役所からわずか約300メートルに位置する9階建てマンションの住民から「エレベーター内で男が女性を羽交い締めにしている」との110番通報が兵庫県警に入りました。駆け付けた警察官が6階のエレベーター前で、この階に住む損害保険会社社員の片山恵さん(24)が倒れているのを発見。片山さんには、一部が肺にまで達する複数の刺し傷に加え、抵抗した際にできる防御創が確認され、搬送先の病院で死亡が確認されました。死因は失血死でした。
犯行後、男は階段で下へ降り、北方向へ走り去ったと目撃者の証言や防犯カメラの映像から判明。現場近くの駐車場からは、血の付いた刃物も発見されています。捜査本部は、防犯カメラの映像を分析し、同日午後8時台に新神戸駅から男が新幹線に乗車したことを確認。翌21日には男が谷本将志容疑者であると特定し、行方を追いました。そして22日、谷本容疑者がJR奥多摩駅で下車したとの情報に基づき、警視庁の捜査員が付近で発見。身柄確保の際に谷本容疑者は抵抗し暴れましたが、逮捕に至りました。
葺合署に移送された谷本容疑者は、22日深夜の会見で「殺意を持っていたかはわかりませんが、ナイフで腹部の辺りを1回か2回くらい刺したことに間違いありません」と供述し、一部容疑を否認しています。
谷本将志容疑者とみられる男の姿。神戸市中央区のマンションで発生した殺人事件の容疑者として逮捕された。
谷本将志容疑者の過去と「とも連れ」手口
兵庫県警捜査本部は、谷本容疑者と片山さんの間に面識があったかどうかは現時点では把握できていないとしていますが、片山さんが谷本容疑者に一方的に狙われた可能性が高いとみています。谷本容疑者はJR三ノ宮駅付近から約10分間にわたり片山さんを追跡し、片山さんがオートロックのマンション玄関に入ろうとした際、その直後を追って侵入する「とも連れ」という手口を用いてマンション内へ侵入しました。マンション玄関の防犯カメラの映像から、片山さんは谷本容疑者の追跡に気付いていなかったと捜査本部はみています。
さらに注目されるのは、谷本容疑者がわずか3年前にも同様の事件を起こしていたという過去です。2022年5月、当時神戸市東灘区に住んでいた谷本容疑者は、中央区のマンションに帰宅した当時23歳の女性に対し、ドアを開けた瞬間に押し入り、首を絞めて殺害しようとした容疑で殺人未遂罪で逮捕されています。さらに、その前から一方的に女性に付きまとっていたことから、ストーカー規制法違反容疑でも再逮捕されています。この事件では、谷本容疑者は首を絞めた後も約1時間にわたり部屋に居座り、「自分が女性を好きだ」と主張したり「警察に言わないで」と懇願したりしたと報じられています。幸い、この女性は軽傷で済みました。
借金と自己破産手続きの背景
谷本容疑者は2022年の事件後、過去の犯罪歴を隠して東京で職を得ていたとみられています。しかし、事件発生時には借金が膨らみ、自己破産手続きを進めている最中であったことも明らかになっています。こうした経済的な困窮と精神的な不安定さが、お盆休みに神戸へ戻り、再び重大な犯罪に手を染める動機の一つとなった可能性が指摘されています。過去の行動パターンから、谷本容疑者には一方的な執着心や衝動性が強く見られ、社会復帰後の監視や再犯防止策の甘さが浮き彫りになった形です。
結論
神戸市中央区で発生した会社員女性殺人事件は、過去に殺人未遂事件を起こし、ストーカー行為も行っていた谷本将志容疑者の逮捕により、その全貌が徐々に明らかになっています。面識のない女性を狙い、巧みな手口でマンションに侵入し、犯行に及んだ今回の事件は、都市生活における潜在的な危険性と、過去の犯罪者に対する社会の対応について、深刻な問いを投げかけています。警察は今後、谷本容疑者の動機、被害者との関係、そして過去の事件との関連性について、さらに詳細な捜査を進める方針です。
参考文献: