現在公開中の映画『鬼滅の刃 無限城編 第一章 猗窩座再来』は、公開からわずか1ヶ月で興行収入257億円を突破し、国内歴代興収4位にランクインする大ヒットを記録しています。この人気は日本国内に留まらず、『Demon Slayer: Infinity Castle』としてアメリカでの公開も予定されており、前売り券の売上はアニメ映画として過去最高を更新。チャニング・テイタムが英語版キャストに起用されるなど、9月12日の全米公開に向けてその期待は高まるばかりです。すでに海外の専門サイトでは本作を鑑賞したライターによるレビューが掲載され始めており、その評価の全容が明らかになりつつあります。
映画『鬼滅の刃 無限城編 第一章 猗窩座再来』より、壮絶な戦いを繰り広げる上弦の参・猗窩座の姿。アクションシーンの迫力とufotableによる美麗なアニメーションが際立つ。
国境を越える「アドレナリン全開のアクション」:海外レビューの共通認識
海外のレビューは概ね、本作のアクションシーンの量と質に対して非常に好意的です。多くの評価では、CGを多用した表現方法が効果的に活用されており、その視覚的な迫力が高く評価されています。まさに「アドレナリン全開のアクション」は、言語や文化の壁を越え、世界中の観客に響く共通の魅力として認識されているようです。ufotableによるアニメーション技術の高さは、ここでも国際的に認められています。
一方で浮上する「テンポの悪さ」:海外サイトの具体的な指摘
ポジティブな評価が多い一方で、いくつかの海外記事では作品の改善点にも言及しています。特に、映画の「テンポの悪さ」は複数のレビューで指摘される共通の課題です。
シンガポールの「danamic」:フラッシュバックによる流れの中断
アート、音楽、ゲーム、テック分野の記事を掲載するシンガポールのサイト「danamic」は、本作のテンポの悪さに注目。「アクションの出来が良いだけに、テンポの悪さが気になる」と指摘しています。さらに、作中に頻繁に挿入されるフラッシュバック(回想シーン)については、「『鬼滅の刃』で見慣れないものではないが、本作においては映画の流れを中断させるような印象を与える」「アクションに没頭している時には、むしろ耳障りに感じる」と述べ、作品のリズムを途切れさせていると評価しています。
「SCREENDAILY」:エピソード構成とモノローグの課題
映画レビューサイト「SCREENDAILY」も、本作の美点と欠点の両方に言及しています。外崎春雄監督が作り上げたアクションシーンや、それを盛り上げる劇伴については惜しみない賞賛を送り、「戦闘は独創的で、広大でまさに無限に広がるような城内の様子は視覚的にも堂々としている」と高く評価しています。しかし、欠点として「エピソード構成が時折テンポを乱している」と指摘。ランタイムが長いにも関わらず、モノローグの読み上げが挟まれる点に疑問を呈しています。また、シリーズで人気のキャラクターの一部が本作に登場しない点についても、「次回作に登場するだろう」としつつも、「それはすぐではなさそうだ」と映画の制作期間を踏まえた指摘を加えています。
「GamerBraves」:猗窩座戦でのフラッシュバックの長さ
ゲーム、アニメ、テクノロジー関連のニュースサイト「GamerBraves」は、本作を「多少のつまづきはあるが、見事な映画」と評しています。ufotableのアニメーションワークの完成度の高さやオーディオエレメントのデザインは概ね絶賛されており、特に戦闘シーンの出来や猗窩座の攻撃の重みが表現されている点については高く評価しています。一方で、ここでも猗窩座との戦闘中に挿入されるフラッシュバックシークエンスの長さに言及。原作漫画の内容に沿ったものであることを理解しつつも、「テンポの速い戦闘の最中にフラッシュバックが配置されることで、リズムのずれが目立つ」と指摘しています。加えて、三部作の第一作という立ち位置から、キャラクターの登場頻度にムラがある点についても触れています。
海外レビューが共通して指摘する点:回想シーンの扱い
これらの海外レビューサイトを総合すると、共通して指摘されているのは「戦闘シーンにフラッシュバックが挟まれることで、映画のテンポが乱れている」という点です。登場キャラクターの偏りについては、「三部作の第一作である以上仕方がない」という擁護的な意見も多く見られますが、回想シーンの尺が長く、作品のリズムを阻害しているという指摘は、国境を越えて多くの批評家が共有する見解と言えるでしょう。
日本国内のレビュー投稿サイトでも回想シーンの長さについて指摘する声はありますが、それに対して作品の熱心なファンからの強い反論が書かれることも多く、日本語圏のネット上では率直な批判がしにくい雰囲気が存在するのも事実です。それに対し、英語圏のレビューサイトは比較的風通しが良く、作品の美点も欠点もフラットに記述できているように見受けられます。この批評の自由さが、今後本格的に海外で公開された後も維持されるのか、非常に興味深い点です。
参考文献:
- Yahoo!ニュース: https://news.yahoo.co.jp/articles/228dbf8837747b138326af63a2118db4e0c52855
- danamic.org
- screendaily.com
- gamerbraves.com