米国のトランプ大統領は22日、ロシアによる侵攻が続くウクライナ情勢について、「2週間以内」に対応策を決定する方針を表明しました。大統領は「巨大な制裁か関税か、その両方か。もしくは何もしないかだ」と述べ、ロシアの動向次第で対露制裁を強化する可能性に言及しつつ、米国が和平仲介への関与を弱める可能性も示唆しました。この発言は、ウクライナを巡る国際社会の外交的均衡に新たな不確実性をもたらしています。
トランプ大統領はホワイトハウスでの記者会見で、2週間後には「ロシア、ウクライナについてもその姿勢が分かると思う。我々が取る行動を決定する」と説明し、この決断が「非常に重要になる」と強調しました。さらに、大統領は「(ロシアとウクライナに)『これはあなたたちの戦いだ』と言うかもしれない」とも述べ、米国の役割を再考する姿勢を示唆しています。
ウクライナでのミサイル攻撃と米国の対応の変化
21日にはウクライナ西部ムカチェボで米企業所有の施設がロシア軍のミサイル攻撃を受け、トランプ大統領はこれに対し「全く愉快ではない」と強い不快感を表明しました。
これまでのトランプ政権は、即時停戦に応じないロシアへの制裁として、ロシアと取引する第三国に「2次関税」を課すと公言し、ロシアに譲歩を迫る方針を示していました。しかし、米アラスカ州で15日に開催された米露首脳会談以降、即時停戦の主張を事実上取り下げ、ロシア側が要求する包括的な和平合意の実現を目指す方針に転換しました。これに伴い、対露追加制裁は当面見送られ、ロシアの今後の出方が慎重に見極められる状況となっています。
プーチン・ゼレンスキー会談の行方と各国の反応
米国政権は、プーチン露大統領がウクライナのゼレンスキー大統領との首脳会談に「同意した」と指摘し、早期開催への期待を表明していました。しかし、ロシア側は会談に対し依然として慎重な姿勢を崩していません。ロシアのラブロフ外相は22日、米NBCテレビのインタビューにおいて、首脳会談の「計画はない」と明言し、米国の主張を否定しました。
一方、ゼレンスキー大統領は22日、プーチン大統領との会談について、ロシアが消極的な姿勢を続ける場合、支援国が追加制裁を科すべきだと強く主張しました。
ウクライナのゼレンスキー大統領、対露追加制裁の必要性を訴える(ブリュッセル、2025年8月17日)
北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長との首都キーウでの会談後の記者会見で、ゼレンスキー大統領は「ロシアは首脳会談を回避するため、あらゆる手を尽くしている」との見方を示しました。そして、「ロシアが外交的解決に踏み出さない場合、強力な制裁が必要だ」と述べ、国際社会に対しロシアへの圧力を強化するよう求めました。
結論
トランプ米大統領の「2週間以内」の決断表明は、ウクライナ情勢における米国の関与のあり方を大きく左右する可能性があります。対露制裁の強化と和平仲介からの撤退という選択肢は、国際社会の動向に深刻な影響を与えることでしょう。また、プーチン露大統領とゼレンスキー宇大統領による首脳会談の実現に向けた動きは停滞しており、外交的解決への道筋は依然として不透明なままです。各国の首脳がどのような決断を下し、それがウクライナ情勢にどう影響するのか、今後の展開が注視されます。
参考文献
毎日新聞