トランプ大統領、ウクライナ和平進展なければ対露制裁示唆 – 会談後1週間で不満表明

トランプ米大統領は22日、ウクライナ和平に向けた具体的な進展が見られない場合、2週間以内にロシアに対し新たな制裁を科す可能性があると警告しました。これは、米アラスカ州で行われたロシアのプーチン大統領との会談から1週間が経過しても、目立った動きがないことへのトランプ氏のいら立ちを示すものです。ウクライナ紛争の解決に向けた米露間の緊張が高まる中、各国の指導者たちはそれぞれの立場から和平への見解を表明しており、多国間協議の実現には依然として道のりが見えていません。

トランプ氏、和平努力に「不満」表明と大規模制裁の可能性

トランプ大統領は、ウクライナの和平に向けたあらゆる側面での努力に対し「満足していない」と明確に表明しました。ロシアによるウクライナ侵攻を終結させるための取り組みが進展するかどうかは、今後2週間以内に明らかになるだろうと述べ、対ロシア制裁を科す可能性を改めて示唆しました。大統領は「我々が何をするかについて近く決定を下す。極めて重要な決定になるだろう。大規模な制裁に踏み切るか、大規模な関税を課すか、あるいはその両方になるか。何もせずに『それはあなた方の問題だ』と言うかもしれない」と語り、選択肢が多岐にわたることを強調しました。

米アラスカ州アンカレッジで会談中のトランプ大統領とプーチン大統領。ウクライナ和平協議の進展を巡る米露間の緊張が高まっている様子を示す。米アラスカ州アンカレッジで会談中のトランプ大統領とプーチン大統領。ウクライナ和平協議の進展を巡る米露間の緊張が高まっている様子を示す。

プーチン大統領、トランプ氏の指導力に期待を表明

一方で、ロシアのプーチン大統領は、トランプ氏の指導力がロシアと米国の関係修復に寄与すると確信していると発言しました。プーチン氏は、アラスカ州で15日に行ったトランプ氏との会談について、「極めて有意義で率直な話し合いができた」と評価しました。さらに、「トランプ大統領の就任により、トンネルの先に光が差し始めた」と述べ、両国関係の改善に対する期待感を示しました。

ゼレンスキー大統領、強固な安全保障とプーチン氏との会談を要求

同日、北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長がウクライナの首都キーウを訪問しました。ゼレンスキー大統領はルッテ氏との共同記者会見で、ウクライナに対する「安全の保証」について協議したことを明らかにしました。この保証は、NATO加盟国の集団防衛を定めた北大西洋条約第5条に類似したものでなければならないとの考えを表明しました。ゼレンスキー大統領は、和平実現に向けプーチン大統領との会談をこれまでも繰り返し要請していると述べ、「ロシアは会談が実現しないようあらゆる手段を尽くしている。ロシアとは異なり、ウクライナは首脳会談を恐れていない」と語気を強めました。そして、ロシアが和平実現に関心を示さない場合、同盟国に対し新たな制裁を導入するよう呼びかけました。

ルッテ事務総長はこれに対し、NATO加盟国はウクライナと協力し、ロシアが再びウクライナに侵攻しないよう強固な安全の保証を確立するために取り組んでいると言及しました。「強固な安全の保証は不可欠であり、現在その具体化に向けた作業を進めている」と述べ、NATOとしての支持を表明しました。

ロシア外相、首脳会談の議題「全く整っていない」と指摘

ロシアのラブロフ外相は、ロシアとウクライナの首脳会談について、現時点では議題の準備が全く整っていないと指摘しました。ラブロフ外相は、「プーチン大統領は首脳会談の議題が整い次第、ゼレンスキー氏と会う用意がある。ただ、議題は全く整っていない」と述べ、会談の条件が満たされていないとの見解を示しました。

ラブロフ外相の発言について、トランプ大統領は、プーチン氏とゼレンスキー氏は「油と酢」のような関係だとし、両氏が協力できるか「様子を見てみよう」と述べるにとどめました。また、ロシアに対する制裁の可能性に言及しつつも、トランプ氏は2026年に米国、カナダ、メキシコが共催するサッカーのワールドカップ(W杯)の観戦をプーチン氏が希望していると言及し、「プーチン氏は来るかもしれないし、来ないかもしれない。状況次第だ」と語りました。

結論

トランプ米大統領の対ロシア制裁警告は、アラスカ会談後もウクライナ和平プロセスにおける進展が見られない現状に対する米国の強い不満を浮き彫りにしています。プーチン大統領が関係改善に期待を示す一方、ゼレンスキー大統領は強固な安全保障と首脳会談を強く求めており、各国間の思惑が複雑に絡み合っています。ロシア外相が会談の議題が未整備であると指摘する中、ウクライナ紛争の和平への道筋は依然として不透明であり、国際社会の動向が注視されます。

参考文献