日韓首脳、未来志向の関係発展へ協力確認 – 石破首相と李大統領が初の会談

石破茂首相は23日夕、6月の就任後初めて来日した韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領と首相官邸で会談し、未来志向の日韓関係発展に向けた協力推進を確認しました。両首脳による相互往来「シャトル外交」の第1弾と位置付けられるこの会談で、首相は冒頭、「日韓の安定的な関係の発展は両国と地域全体の利益になる」と強調。東アジアの厳しい戦略環境下での連携強化の重要性が浮き彫りになりました。

首相官邸での日韓首脳会談前、石破首相が李大統領を出迎える様子首相官邸での日韓首脳会談前、石破首相が李大統領を出迎える様子

「シャトル外交」再開と東アジアの安全保障環境

今回の李大統領の来日は、1965年の国交正常化以降、韓国大統領が就任後の最初の2国間訪問で日本を訪れる初めてのケースとなります。ロシアと北朝鮮の軍事協力進展など、東アジアの安全保障環境が悪化する中、「韓国政府の日本重視の表れ」(外務省幹部)と評価されています。石破首相は会談冒頭、「非常に厳しい戦略環境の下、最初に日本を訪問していただき、大変心強い」と述べ、これに対し李大統領は「それぐらい韓日関係を重要視しているとご理解いただければ」と応じました。また、首相が掲げる地方創生に触れ、李大統領は次回の会談を韓国の地方都市で開催したいとの意向を表明し、交流の深化に期待が寄せられています。

歴史問題への対応と協力分野の拡大

会談冒頭では歴史問題に関する具体的な言及は避けられましたが、李大統領は「難しい問題は難しい問題として扱い、時間をかけて考慮し、一方で協力できる分野では協力する」と述べ、いわゆる徴用工問題や慰安婦問題といった歴史認識問題を解決済みとしない余地を残しつつ、対話を通じた解決への姿勢を示しました。李大統領は来日前の書面インタビューで過去の政府間合意を「覆すことはできない」と述べており、この方針が改めて確認された形です。

両首脳はさらに、北朝鮮の核・ミサイル開発の抑止に連携して取り組む方針を確認。北朝鮮、中国、ロシアを念頭に、日米韓3カ国の安保協力をさらに強化する必要性も共有しました。今年は日韓国交正常化60周年の節目にあたることから、経済や文化交流、少子高齢化への対策など幅広い分野での関係強化も申し合わせ、具体的な協力事業の推進に合意しました。

今後の展望:米国訪問と関係強化の道筋

日韓の「シャトル外交」は、歴史問題を巡る両国関係の悪化で一時途絶えていましたが、2023年5月に当時の岸田文雄首相と尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の間で再開されました。今回の李大統領の訪日は、この流れを加速させるものです。李大統領は日本に続いて米国を訪れ、トランプ大統領との初会談に臨む予定であり、日米韓の連携強化がさらに進むことが期待されます。今回の会談は、地域の平和と安定に不可欠な日韓協力の新たな章を開く重要な一歩となるでしょう。


参考文献: