「カミソリ喉痛」新変異株ニンバスが子どもにも拡大か?医師が解説

ここ数週間、世界各地で新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が再び拡大し、その背後には複数の新しい変異株の存在が指摘されています。これらの変異株はそれぞれ異なる特徴的な症状を示すため、世界的に注目を集めています。日本国内でも例外ではなく、6月下旬以降、定点医療機関からの報告数が増加傾向にあり、特に10歳未満の小さなお子さんの間での感染例が顕著になっています。

新型コロナの変異株ニンバスと子供への感染状況について、専門医が解説する様子を示すイメージ新型コロナの変異株ニンバスと子供への感染状況について、専門医が解説する様子を示すイメージ

新型コロナ新変異株「ニンバス」の特徴的な症状と現状

最近特に注目を集めているのが、オミクロン株の派生系統である「NB.1.8.1」、通称「ニンバス」です。2025年5月中旬の時点ですでに世界22カ国以上で確認されており、その感染の広がりが懸念されています。

ニンバス株の最大の特徴は、「カミソリやガラス片を飲み込んだような」と表現されるほどの強烈な喉の痛みを引き起こす点です。これまでのオミクロン株系統と同様に、非常に高い感染力を持つことも指摘されており、迅速な感染拡大につながる可能性があります。

国内の動向を見ると、埼玉県では2025年5月以降、それまで主流だったXEC系統からNB.1.8.1系統への置き換わりが確認されています。6月以降は毎週、このNB.1.8.1系統の検出割合が高水準で推移していることが、県の公式発表データからも明らかです。お盆休み期間中の人の移動増加、夏イベントの開催、そして猛暑による換気不足が重なり、このニンバス株による流行に拍車をかけていると考えられます。

小児感染の事例とその診断上の留意点

筆者が先日診察したのは、発熱と軽い腹痛を訴えて来院した5歳の女の子でした。発熱からわずか1時間しか経っておらず、その時点ではウイルス量が十分に検出されない可能性があったため、新型コロナウイルスの検査は実施しませんでした。しかし、同居する16歳のお兄さんが迅速検査で陽性であったことから、この女の子も状況から感染が推定される「みなし陽性」と判断されました。

このケースでは、ニンバス株で特徴的に報告されている「強い喉の痛み」のような症状は確認されませんでした。日常の診療において、どの新型コロナ変異株に感染しているかを個別に調べることは通常なく、株の種類が特定されるのは、行政機関や研究機関が収集・分析した疫学データによるものです。

診察当時、ニンバス株が現在ほど大きく報道され、話題になる前の時期でもあり、診断はあくまで同居家族の陽性結果と本人の発熱に基づいた「みなし陽性」であり、特定の株の種類まで特定したものではありませんでした。

子どもへの感染対策と過度な楽観主義の危険性

新型コロナウイルスは、飛沫感染やエアロゾル感染によって広がるため、これまでと同様に幼稚園、保育園、学校といった集団生活の場だけでなく、家庭内でも感染が拡大するリスクが常に存在します。そのため、家庭内での感染予防対策にも十分な注意が必要です。

これまでの新型コロナ感染症の傾向と同様に、基礎疾患がなければ、子どもは一般的に大人と比較して重症化しにくいと言われています。しかし、「今は元気そうだから大丈夫だろう」と安易に判断し、油断することは大変危険です。症状が見られる場合は、軽度であっても慎重に子どもの様子を観察し、必要に応じて医療機関を受診するなどの適切な対応を取ることが極めて重要です。子どもの健康を守るためにも、引き続き警戒を怠らないようにしましょう。

参考資料