「石破首相続投論」急浮上:自民党内の複雑怪奇な力学と森山幹事長の影

ここに来て、自民党内で叫ばれていた「石破降ろし」の動きが急減速し、石破茂首相(自民党総裁)の続投が現実味を帯びてきている。首相周辺からは、石破首相が「9月下旬まで首脳外交を精力的に行い、その存在感をもって退陣論を吹き飛ばす」と意気軒昂であるとの声が聞かれる。しかし、水面下で進行する自民党内の動きを詳細に分析すると、「この仕掛け人は森山裕幹事長ではないか」との見方も浮上するなど、「複雑怪奇な党内事情」(閣僚経験者)が明らかになっている。

「石破降ろし」の急減速と首相続投の現実味

今夏の参議院選挙で自民・公明両党が大敗し、衆参両院で少数与党に転落した際、石破政権は「完全に命脈が尽きた」(自民党幹部)と広く見られていた。当時、読売新聞や毎日新聞をはじめとする主要メディアはこぞって「石破退陣説」を煽り立て、退陣が既成事実化するかに見えた。しかし、参院選の投開票日からわずか数週間後には、選挙で示された民意とは相反する形で、各種世論調査における内閣支持率が上昇。さらに、石破首相の続投を容認する割合が退陣派を上回るという「不可思議な状況」(政界関係者)が生まれたのである。この急展開の背後には、森山裕幹事長の巧妙な立ち回りが指摘され、政界に波紋を広げている。

石破茂首相と森山裕幹事長、自民党内の複雑な力学を示す写真石破茂首相と森山裕幹事長、自民党内の複雑な力学を示す写真

参院選大敗後の「不可思議な」支持率上昇の背景

世論調査の結果を詳細に分析すると、石破政権の続投を容認する層には、「自公の大敗は石破首相個人ではなく自民党全体の責任である」「ポスト石破の有力候補が見当たらない」といった“消極的”な石破支持派が多いことが判明している。その一方で、「石破降ろし」に狂奔する人物の多くが「政治とカネ」の問題を起こした“裏金議員”であることに対する批判や反発も根強く、これが支持率上昇の一因となっている可能性が高い。国民の不満の矛先が、石破首相個人から党全体の体質へと変化したと見る向きもある。

世論調査が示す「石破首相続投」への追い風

8月25日に読売新聞が公表した世論調査では、内閣支持率が39%と前回調査から17ポイントも急上昇した。さらに、「石破首相が辞任すべきか」という問いに対しては、「思う」(42%)を「思わない」(50%)が上回る結果となった。今回の内閣支持率の上昇幅は、読売新聞が2008年に電話調査を開始して以降で最大であり、同紙は「日米関税交渉での合意や、コメの増産表明が国民に評価された」と分析している。この調査結果について、政界では「石破首相の続投論をさらに加速させるだろう」(自民党幹部)と受け止める声が多く、石破政権の命運を大きく左右する要因となりつつある。

鍵を握る森山幹事長の動向と党内力学

こうした党内外の情勢変化の中で、今後の「石破降ろし」の展開を左右する最も重要な立場にあるのが森山裕幹事長である。森山幹事長の最近の言動は、民意の変化を巧みに利用し、「『続投宣言』を繰り返す石破首相の“後押し役”に転身しつつあるのではないか」(旧安倍派幹部)との見方にもつながっている。当初は「石破降ろし」の仕掛け人とも目された森山氏が、手のひらを返したように石破首相の続投を容認し、むしろそれを助長するような動きを見せることで、自民党内の権力闘争は一層複雑化の様相を呈している。

石破政権の将来は、世論の動向と、それに巧妙に呼応する森山幹事長をはじめとする党内実力者の動きにかかっており、永田町の視線は森山氏の次なる一手へと注がれている。

参考資料

Source link
Yahoo!ニュース