ドイツ極右活動家、性別変更で女性刑務所へ収監:新「性別自己決定法」巡る論争拡大

ドイツで、性的マイノリティー(LGBTQ)へのヘイト発言で有罪判決を受けた極右活動家が、法的性別を女性に変更し女性刑務所に収監される事態が発生。昨年施行された「性別自己決定法」の適用を巡り、国内外で大きな論争を巻き起こしている。

ヘイトスピーチによる実刑判決と「奇策」

独紙フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(FAZ)などの報道によると、マルラ・スベニャ・リビヒ被告(53)は、性的マイノリティーを「社会の寄生虫」と罵倒するなど、憎悪扇動・侮辱罪に問われ、2023年7月に懲役1年6カ月の実刑判決を受けた。今年5月に刑が確定したが、リビヒ被告は今年1月、突然自身の社会的性別を男性から女性に変更する「奇策」に出て、状況は一変した。

新「性別自己決定法」の盲点

この性別変更は、昨年11月にドイツで施行された「性別自己決定法」の盲点を突いたもの。同法は、14歳以上で法定代理人の同意を得た未成年者が、精神科医の診断や裁判所の許可なしに、行政上の性別と名前を自ら変更可能と規定している。性転換手術も不要とされ、これまでの手続きを「不必要な人権侵害」と見なし、個人の自己決定権強化を目的に導入された。

性別変更に関する社会問題の概念図性別変更に関する社会問題の概念図

女性刑務所収監と続く波紋

リビヒ被告は「スベン」という本来の名前も女性形の「スベニャ」に改名し、ひげを伸ばした顔に口紅を塗り、イヤリングを着用、「政治的に迫害されている女性人権活動家」を主張している。ザクセン州のケムニッツ女性刑務所からは、他の受刑者の安全確保のため独房収監が提案されたが、被告はX(旧ツイッター)で「独房監禁は拷問であり、自身は生まれたときから完全に正常な女性である」と反論。この発言は更なる波紋を広げている。

論争が提起する社会的な課題

この異例の事態は、個人の自己決定権の尊重と公共の安全、そして法律の意図せぬ悪用の可能性について、ドイツ社会全体に深い問いを投げかけている。新たな法律が直面する現実的な課題を示唆しており、今後の法的・社会的な対応が国際社会からも注目される。

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