全国民一律2万円給付金、参院選結果後の行方と代替支援策を解説

先の参議院選挙では、与党が過半数割れという結果に終わりました。この民意を受けて、与党が公約として掲げていた「国民一律給付金」、特に全国民への一律2万円の現金給付の実現が困難な情勢となっています。物価高騰が続く中、多くの国民が生活支援策に期待を寄せていますが、今後の給付金政策は不透明な状況です。本記事では、与党の公約であった「全国民一律給付金」の詳細と、参議院選挙の結果がその実現に与える影響、さらに現在実施されている他の支援事業について、専門家の視点から詳しく解説します。

日本の現金給付政策を象徴する日本円紙幣のクローズアップ。物価高騰対策としての国民一律給付金制度の行方を示すイメージ。日本の現金給付政策を象徴する日本円紙幣のクローズアップ。物価高騰対策としての国民一律給付金制度の行方を示すイメージ。

与党が公約に掲げた「全国民一律給付金」とは

自民党は、第27回参議院選挙の公約の一つとして、物価高騰に直面する国民の暮らしを支えるための「国民一律給付」を掲げていました。具体的な内容は、子どもや住民税非課税世帯の大人には1人あたり4万円、その他の世帯の国民には1人あたり2万円を給付するというものでした。同様に、公明党も当面の物価高騰対策として、「生活応援給付」を通じて国民に経済的な還元を行う方針を示していました。この「現金給付」は、生活困窮者だけでなく、幅広い層への支援を目的とした大規模な経済対策として注目を集めていました。

参院選結果が左右する「一律2万円現金給付」の実現可能性

参議院選挙で与党が過半数を割り込んだ結果、公約の中心であった「国民一律給付」の財源となる補正予算の成立が極めて困難な情勢となりました。これにより、全国民を対象とした一律2万円の現金給付は、当初の見込みよりも実現が遠のいています。

こうした状況の中、政府・与党は、野党である立憲民主党が公約に掲げていた「食卓おうえん給付金」として1人あたり2万円の給付案について、協議に前向きな姿勢を示しています。しかし、野党各党からは、現金給付よりも恒久的な減税を求める声が強く、与野党間の意見の隔たりは大きく、「国民一律給付」の行方は依然として不透明です。

さらに、一部報道によると、自民党は今秋にも策定される経済対策において、全国民を対象とした現金一律給付案そのものを見直す方向性を検討しているとのことです。具体的には、給付の対象を絞り込み、その分、対象者への支給額を増額するなどの制度設計変更が検討されています。このため、給付の対象が全国民から低所得世帯や子育て世帯といった特定の層に限定される可能性が高まっており、今後の政府の動向を継続して注視する必要があります。

「国民一律給付金」以外の既存支援策

「国民一律給付金」の議論に注目が集まる一方で、既に実施されている様々な生活支援事業も存在します。これらは、物価高騰の影響を受ける国民の生活を多角的に支えるための重要な施策です。主な支援事業として、「電気・ガス料金負担軽減支援事業」、「燃料油価格定額引下げ措置」、「定額減税で減税しきれなかった方への不足額給付金」などが挙げられます。それぞれの具体的な内容は以下の通りです。

電気・ガス料金負担軽減支援事業

この事業は、2025年7月使用分から9月使用分までの3ヶ月間、家庭や企業に対し、月々の電気・ガス料金を使用量に応じて値引きを行うものです。経済産業省資源エネルギー庁が公表している値引き単価は以下の通りです。

  • 2025年7月使用分
    • 電気:低圧2.0円/kWh、高圧1.0円/kWh
    • 都市ガス:8.0円/立方メートル
  • 2025年8月使用分
    • 電気:低圧2.4円/kWh、高圧1.2円/kWh
    • 都市ガス:10.0円/立方メートル
  • 2025年9月使用分
    • 電気:低圧2.0円/kWh、高圧1.0円/kWh
    • 都市ガス:8.0円/立方メートル

燃料油価格定額引下げ措置

ガソリンなどの燃料油価格の高騰を受け、2025年5月22日から実施されている価格支援策です。これにより、消費者の負担軽減が図られています。具体的な引下げ幅は、ガソリン・軽油が1リットルあたり10円、重油・灯油が5円、航空機燃料が4円となっています。

定額減税で減税しきれなかった方への不足額給付金

定額減税や当初調整給付を受けたものの、本来受け取るべき額に達しなかった方(不足額給付I)や、定額減税や代替の一時金を全く受け取れなかった方(不足額給付II)が対象となる給付金です。

  • 不足額給付Iでは、「本来給付すべき所要額」と「当初調整給付額」との差額が支給されます。
  • 不足額給付IIでは、原則として一律4万円が支給されます。

まとめ:給付金政策の今後の動向を注視

参議院選挙の結果、与党が公約に掲げた全国民一律の現金給付は、野党の協力がなければ実現が極めて難しい状況にあります。仮に与野党間の協議が進展し、具体的な方向性が定まれば給付への道筋が見えてくる可能性もありますが、交渉が難航すれば実施そのものが危ぶまれます。選挙では減税を期待した声が多かった一方で、一律現金給付に期待を寄せる国民も少なくありません。今後、政府・与党がどのような経済対策を打ち出し、給付金政策がどのように変化していくのか、その動向を注意深く見極める必要があります。最新の情報に常にアンテナを張り、自身の家計に影響する政策の進展を確認していくことが重要です。

出典: 経済産業省資源エネルギー庁 電気・ガス料金支援 電気・都市ガスをご利用するみなさまへ