石破茂首相「辞めるなデモ」の真意:若き主催者が語る“対ポピュリズム”の危機感

8月1日午後7時、東京・永田町の自民党本部前には、ペンライトやプラカードを手にした人々が「石破辞めるなデモ」に集結しました。参院選の敗北を受け、退陣論が渦巻く石破茂首相(68)を激励しようと、「踏ん張れ石破! 辞めるな辞めるな石破!」という力強い声が響き渡りました。この異例の政治デモを呼びかけたのは、わずか29歳の男性。なぜ今、多くの人々が石破首相の続投を求めるのか、その背景と主催者の真意を深掘りします。

「異例のデモ」が示すもの:石破首相続投を求める声の背景

「石破辞めるなデモ」は、参院選投開票日直後の7月25日に初めて開催され、その後8月1日、8日の計3回にわたり、自民党本部前や首相官邸前で行われました。特に8月1日のデモでは、石破首相がファンを公言するキャンディーズの「春一番」の曲に合わせ、「石破〜!」と参加者が一体となって叫ぶ一幕もありました。警察官との衝突もなく、約1時間のデモは平和裏に幕を閉じ、政権続投を求める異例の集会として新聞やテレビでも大きく報じられました。主催者は、社会運動に馴染みのない層にも参加しやすいよう、シュプレヒコール(かけ声)の文言を「負けるな」「頑張れ」など応援に徹し、特定の政治家や政党への罵倒や対立を煽る言葉を避けるよう呼びかけていました。

8月1日のデモで「石破辞めるな!」とペンライトを振る参加者たちの様子8月1日のデモで「石破辞めるな!」とペンライトを振る参加者たちの様子

主催者・平山貴盛氏が明かす「辞めるなデモ」の真意と参加者層

このデモを主催したのは、X(旧ツイッター)を通じて参加を呼びかけ、約600人を集めた平山貴盛氏(29)です。平山氏は、デモの目的を「激励」に置き、社会運動に抵抗がある人でも親しみやすい工夫を凝らしたと語ります。一部で参加者が野党支持者ばかりと指摘されたことに対し、平山氏は強く反論しました。「私が話した参加者の中には『支持政党は自民だが、旧安倍派が嫌いで石破首相を応援している』という方もいました。私の肌感覚では、参加者の半数程度は自民党支持者という印象です」。

平山氏によると、このデモの真の動機は、自民党を応援するというよりも、参院選で参政党のような排外主義的なポピュリズム政党が勢力を伸ばしたことへの強い危機感にあるといいます。彼らは、石破政権をそうした勢力に対する「防波堤」として期待しており、このタイミングでの石破氏の退陣は、極右排外主義に勝利を与えかねないという問題意識を抱えています。参加者の男女比は4:6で女性がやや多く、20〜60代と幅広い年齢層が集まり、ボリュームゾーンは30〜40代でした。しかし、平山氏自身も認めるように、参加者全員が石破首相の政策の全てを支持しているわけではありません。

「石破辞めるなデモ」を主催した平山貴盛氏(29歳)「石破辞めるなデモ」を主催した平山貴盛氏(29歳)

「安倍政治の残滓」と対峙する石破氏への期待

平山氏は、現在一部のポピュリズム政党が勢力を拡大している背景に、安倍晋三元首相の影響があると分析します。彼らが主張する愛国主義的なテーゼ、財務省への過剰な敵視、積極財政といった論調は、かつての「安倍政治」が内包していたものがいずれも先鋭化し、一部では排外的な思想にまで結びついていると指摘します。

一方で石破氏は、安倍政権下で「冷飯を食わされながらも党内野党として毅然と意見」してきた経緯があります。こうした背景から、旧安倍派を含む「安倍政治の残滓」が石破氏の退陣を望むのに対し、多くの人々は、そういった勢力への明確な対立軸として石破氏に期待を寄せ、支持しているのではないでしょうか。このデモは、単なる個人への応援を超え、日本の政治が直面するポピュリズムと排外主義への危機感、そしてそれに対抗するリーダーシップを求める国民の声の表れと言えるでしょう。


参考文献