日本で起業を目指す外国人にとって重要な在留資格「経営・管理」について、出入国在留管理庁は25日、その要件を大幅に厳格化する省令改正案をまとめました。主な変更点として、現行の6倍となる3000万円以上の資本金・出資総額が求められるほか、経営経験や常勤職員の雇用なども新たに義務付けられます。この改正案は9月24日までパブリックコメントで広く意見を募り、10月中の施行を目指しています。
東京都千代田区にある出入国在留管理庁の庁舎外観。外国人起業家の在留資格「経営・管理」の要件厳格化案がまとめられた場所。
在留資格厳格化の背景と主な変更点
今回の厳格化は、これまで日本の「経営・管理」在留資格の要件が諸外国と比較して緩やかであったため、ペーパーカンパニーを悪用して資格を取得する事例が発覚したことを受けたものです。これらの不正利用を防ぎ、真に日本経済に貢献する質の高い外国人起業家を誘致することが狙いです。
改正案では、これまでの要件であった資本金・出資総額500万円以上を、一気に6倍の3000万円以上に引き上げます。これに加え、以下の新たな要件が追加されます。
- 経営経験3年以上: 事業の安定性や継続性を確保するための実務経験が重視されます。
- 経営に関する修士相当以上の学位取得: 専門的な知識と能力を持つ人材を評価します。
- 1人以上の常勤職員の雇用: 事業が日本国内で実際に運営されていることを示す指標となります。
- 新規事業計画の中小企業診断士による確認義務付け: 事業計画の実現可能性と専門性に対する客観的な評価が求められます。
これらの追加要件は、外国人経営者の事業に対する真剣度と実行力を高めることを目的としています。
適用除外および現状の分析
一方、事業分野については従来通り制限は設けられず、日本語能力についても今回の改正案では要件に加えられていません。これにより、特定のビジネス領域や日本語能力の有無に関わらず、起業の門戸は開かれているものの、事業の質がより厳しく問われることになります。
入管庁によると、令和6年末時点でこの「経営・管理」資格を持つ在留者は約4万1600人に上ります。しかし、現在の資格保有者のうち、改正案で示された資本金・出資総額3000万円以上の企業は約4%に過ぎないのが現状です。この数値は、多くの既存の経営者が新たな基準を満たすのが困難である可能性を示唆しています。
今後の見通しと入管庁の柔軟な対応
従来の要件で資格を取得した経営者らも、資格更新時などに新たな基準で審査される見込みです。しかし、入管庁は「新たな要件をすぐに満たせないからといって資格の更新を認めない運用は厳しすぎる」との見解を示しており、個別の事情を考慮し、柔軟に対応していく方針です。これは、急激な変更による混乱を避け、既存の事業継続に配慮する姿勢を示しています。
今回の省令改正案は、日本の在留資格制度の信頼性を高め、悪用を防止すると同時に、より質の高い外国人起業家を日本に呼び込むための重要な一歩となるでしょう。
参考文献
- Yahoo!ニュース (2025年8月26日). 出入国在留管理庁が入る庁舎=東京都千代田区. https://news.yahoo.co.jp/articles/1b4a633d9976215cb736bfca0a0d813874095675