自民党の英利アルフィヤ衆院議員(36)は、2023年4月の衆院千葉5区補欠選挙で初当選を果たし、当時現職の女性国会議員としては最年少として注目を集めました。翌年の衆院選で比例当選し、現在2期目を務める中、自民党は主要な選挙で相次ぐ大敗を喫し、一時は下野が囁かれるほどその求心力を失いつつあります。党内で数少ない若手女性議員の一人である英利議員の目には、現在の自民党がどのように映っているのでしょうか。本記事では、彼女が抱く率直な「違和感」と、党への提言に焦点を当てます。
国連・日銀キャリアを経て自民党へ:政界入りの原点と現在の「違和感」
英利議員は、日本銀行や国連事務局でのキャリアを経て政界に進出しました。彼女の政治的ミッションの原点は、国連職員時代に目の当たりにしたロシアによるウクライナ侵攻であり、日本の安全保障に対する強い危機感からでした。防衛力強化や憲法改正の必要性について明確な姿勢を示す自民党を選ぶことは、彼女にとって自然な流れだったと語ります。また、言論や思想の自由を尊重する自民党の懐の広さも魅力に感じ、出馬するなら自民党以外は考えられなかったといいます。しかし、現在の党の姿には少なからず「違和感」を抱いているのが現状です。
自民党の英利アルフィヤ衆院議員が自身の事務所でインタビューに応じる様子
自民党内の「エコーチェンバー」と国民との乖離
英利議員は、日本の政治、特に自民党を含む政界において、いまだに特定の年齢層、家庭環境、経済状況を持つ男性が多くを占めていると指摘し、多様性の欠如に言及しています。元キャリア官僚や元芸能人など、議員の属性にも偏りがあると感じているようです。彼女自身はウイグルにルーツを持ち、カタカナの名前であることから多様性を代表していると見られることもありますが、日銀や国連でのキャリアは官僚出身者と本質的に変わらないとの見方を示します。
さらに、英利議員は党内に「自民党エコーチェンバー」とでも呼ぶべき意見の閉鎖的な循環が存在すると警鐘を鳴らします。特に7月の参院選後、党内で「総裁を代えれば次の選挙で勝てる」という声が多数聞かれたことに驚きを隠しませんでした。選挙結果に対する議論は当然必要であるとしながらも、国民が自民党を見放した本質的なきっかけは「政治とカネ」の問題、具体的には政治資金収支報告書の不記載など、献金への不誠実な対応にあったと力説します。このような指摘を党内で行うと、「空気を読めない人」と見られることもあるものの、その重要性を理解し、後押ししてくれる先輩議員もいるといいます。
派閥の役割と選択的夫婦別姓への見解
現在、自民党で唯一現存する派閥である麻生派に所属する英利議員は、派閥の功罪についても言及しています。政治的バックグラウンドがなかった自身が選挙で勝利できたのは、派閥という「プラットフォーム」と、団結力の高いカルチャーの中で先輩議員からの指導や同僚からの支えがあったおかげだと、そのプラス面を評価しています。そのため、旧態依然とした政治のすべてを否定するつもりはないとしつつも、現在の厳しい局面においては、良き伝統と悪しき慣習を明確に整理する必要があると訴えます。
また、英利議員は選択的夫婦別姓に賛成する自身のスタンスが自民党内では主流ではないことに対し、同調圧力を感じることは全くないと語ります。むしろ、「自民党は保守のイメージが強いため選択的夫婦別姓に賛成してきたが、そう見られない」と悩む先輩の男性議員もいることを明かし、党内の多様な意見が存在する実態を示唆しました。
提言が示す自民党の未来
英利アルフィヤ議員の率直な提言は、現在の自民党が直面する構造的な課題、すなわち多様性の欠如、政治資金問題、そして党内議論の質の偏りという本質的な問題を浮き彫りにしています。国民の信頼を回復し、再び強い求心力を持つ政党となるためには、表面的なリーダー交代に留まることなく、これらの根深い問題に対し真摯に向き合い、抜本的な自己改革を進めることが不可欠であると結論付けられます。若手女性議員の声は、自民党、そして日本政治の未来を考える上で重要な視点を提供しています。
参考文献:
- Yahoo!ニュース / AERA dot. (2025年8月27日). 「英利アルフィヤ衆院議員が語る自民党の『違和感』」.