ブルース・ウィリス、進行する前頭側頭型認知症の「言葉を超えた絆」を妻エマ・ヘミングが語る

2022年3月に俳優業を引退した名優ブルース・ウィリス(70)の現在の状況について、妻のエマ・ヘミング(47)が米ABC局の特別番組「Emma & Bruce Willis: The Unexpected Journey」で心境を明かしました。彼の病状が進行する中で、言葉を超えた家族の絆がどのように彼らを支えているのか、その詳細が語られています。

前頭側頭型認知症との闘病を続ける俳優ブルース・ウィリスの肖像前頭側頭型認知症との闘病を続ける俳優ブルース・ウィリスの肖像

進行する認知症と新たなコミュニケーション

ブルース・ウィリスは2022年3月に俳優引退を発表し、その翌年2月には、行動や言語に問題を生じさせ、人格を変えるタイプの認知症である「前頭側頭型認知症」を患っていることが公表されました。エマは、ブルースが肉体的には健康を保っているものの、脳のダメージが大きくなっており、もはや言葉でのコミュニケーションが困難になっていることを打ち明けました。「言葉は通じなくなっていますが、わたしたちは適応することを学びました。そして今は、違うやり方で彼とコミュニケーションを取ろうとしています」とエマは語ります。

エマは、夫が自身を認識できているかという質問に対し、「つながりはまだあると感じるんです。ただわかるんです。わたしたちが一緒にいると、彼は明るくなるんです」と胸の内を明かしました。この感情的なつながりは、エマとブルースの間に生まれた幼い2人の娘たちだけでなく、前妻デミ・ムーアとの間に生まれた3人の成人した娘たちとの間にも存在するといいます。「彼はわたしたちの手を握ります。わたしたちが彼にキスをし、ハグをすると、彼はそれを受け入れます。それを気に入っているんです」と、家族がブルースに寄り添う様子が伝えられました。

妻エマの葛藤と苦渋の決断

エマは、ブルースとの“つながり”が自身の最大の支えになっていると語ります。「わたしに必要なのはそれだけなんです。彼にわたしが彼の妻だとか、この日に結婚したんだとか、そんなことを覚えていてもらう必要はないんです。わたしはただ、彼とつながりがあると感じたくて、実際に感じるんです」と、切実な思いを吐露しました。病状が進行する中でも、ほんの一瞬、本来のブルースに戻る瞬間があるといいます。「笑い声とか、目のきらめきとか。でもそれを見るのはつらいんです。そんな瞬間はすぐに過ぎ去ってしまうから。ですが、夫が今もここにいてくれることを本当に感謝しています」と、涙ながらに語るエマの言葉からは、愛と悲しみがにじみ出ていました。

ブルースの認知症が進行するにつれて、エマはブルースを暮らしやすい静かな家へ移し、プロの介護士たちに頼るという苦渋の決断を下しました。これは介護の旅の中で最も難しい決断の一つだったと振り返りますが、「でも何よりもまず、ブルースが娘たちのためにそうすることを望んでいると思いました。彼は娘たちには、自分のニーズではなく、娘たちのニーズに合った家で暮らしてほしいと思っているはずです」と、その理由を説明しました。診断が出てから最初の数か月間は、一人で介護しなければならないという思い込みからうつ状態に陥ったものの、継娘であるスカウトから「父よりもあなたのことが心配」と言われ、目が覚めたと明かしています。

結論

ブルース・ウィリスの「前頭側頭型認知症」との闘いは、彼自身だけでなく、妻エマ・ヘミングをはじめとする家族全員に大きな影響を与えています。言葉でのコミュニケーションが困難になってもなお、感情的な「つながり」を大切にし、適応しようと努める家族の姿は、多くの人々に感動と共感を与えます。エマの言葉は、病と向き合う家族の強さと、愛の持つ真の力を示しています。

参考文献