投資すべき「伸びる街」とは?長期的なマンション資産価値向上を見極める方法

「将来的に資産価値が伸びる街はどこですか?」という質問は、不動産投資や住宅購入を検討する多くの人々から頻繁に寄せられます。しかし、毎年目まぐるしく街の価値が変わるという短絡的な見方は適切ではありません。「ローマは一日にして成らず」という言葉があるように、地域の資産価値は一朝一夕で大きく変動するものではないからです。住友不動産が新築マンションを分譲する立地を短期的な有望エリアと見ることもできますが、本質的に重要なのは、目の前の状況に一喜一憂せず、長期的に成功するパターンを見つけることです。本記事では、他の街よりも価格上昇率が大きい「伸びる街」を特定するための具体的な指標と、その見分け方について解説します。

マンションと戸建、なぜ価格上昇に差が生まれるのか?

まず、住宅の種類によって価格上昇のトレンドに顕著な差があることを理解する必要があります。国土交通省が毎月発表する住宅価格指数を見ると、2013年以降、マンション価格は2倍以上に高騰しているのに対し、戸建の価格上昇は2割増に留まっています。このトレンドは、今後も大きく変わることは考えにくいでしょう。

その背景には、いくつかの要因があります。第一に、世帯の人数が減少し続けている現代社会において、戸建よりもマンションへのニーズが強くなっています。コンパクトな生活空間を求める傾向が、マンション市場を活性化させているのです。第二に、建築単価の違いが挙げられます。木造建築の戸建は建築単価を比較的低く抑えられる一方で、鉄筋コンクリート造のマンションは建築単価が高騰を続けています。これは工期の長さが請負費用リスクを高めるという問題にも繋がるため、このコスト差が縮まることは考えにくい状況です。

誰でも簡単!「伸びる街」を見分ける決定的な指標「容積率」

マンション価格の上昇トレンドが続く中、「伸びる街」を見極めるための重要な指標の一つが「容積率」です。容積率とは、敷地面積に対する延べ床面積の割合を示す都市計画上の規制であり、高い建物が建てられるか否かを決定します。一般的に、容積率が高いエリアほど、将来的に高層マンションなどの開発が進みやすく、結果として資産価値が上がりやすい傾向にあります。

区ごとの平均容積率を比較すると、都心3区(千代田区、中央区、港区)が最も高く、これに副都心を持つ渋谷区、新宿区、豊島区(池袋駅周辺)が続きます。意外に思われるかもしれませんが、台東区、荒川区、墨田区といった城東エリアも高い容積率を誇り、21世紀に入ってからのこれらの地域の躍進は、高い容積率によって約束されていたと考えることができます。

一方で、容積率が低い区としては、杉並区、練馬区、世田谷区がワースト3となります。これらの地域はいわゆる「戸建立地」が多く、閑静な住宅地としては魅力的ですが、都市計画上、高い建物を建てにくいため、資産価値が大きく上がることは期待しにくいと言えるでしょう。例えば、杉並区の浜田山駅周辺は良い住宅地ですが、資産価値の面では限定的です。

この容積率による判断の利点は、駅前から見渡した際の風景でほぼ判断できる点にあります。高い建物が林立している街は、それだけで有望なエリアとみなすことができます。この視点から見ると、江東区の豊洲・辰巳・東雲・有明、品川区の大崎・大井町・天王洲アイル・品川シーサイドといった湾岸エリアの多くが、高いポテンシャルを秘めた有望エリアであることが分かります。

都会の街並みと高層マンション群のイメージ写真。資産価値が上昇する有望な街の象徴。都会の街並みと高層マンション群のイメージ写真。資産価値が上昇する有望な街の象徴。

タワーマンションや大規模物件が資産価値を高める理由

マンションの資産性を考える上で、単に立地だけでなく、物件の規模も重要な要素となります。過去に何度も解説してきた通り、低層マンションよりもタワーマンション、小規模物件よりも総戸数の多い大規模マンションの方が、一般的に資産性が高い傾向にあります。「沖有人 7つの法則」などで検索すれば、この原則に関する詳細な情報を見つけることができるでしょう。

この法則は、「伸びる街」の特定にも繋がります。タワーマンションや大規模物件が多く開発されているエリアは、それ自体が需要の高さを物語っており、将来的な資産価値の向上が期待できます。さらに、そうしたエリアでは今後も同様のタワーマンションや大規模物件の開発計画が多くなる傾向があるため、長期的な視点で見ても継続的な資産価値の向上が見込めるのです。都市機能の集積、生活利便性の向上、共用施設の充実などが、大規模物件の魅力を高め、結果として資産価値を維持・向上させる要因となります。

まとめ:長期的な視点で資産価値を高める街選びの要点

「伸びる街」を見極めるためには、短期的な流行に惑わされず、長期的な視点を持つことが不可欠です。マンション市場のトレンド、特に世帯構成の変化と建築単価の上昇がマンション優位の状況を形作っています。その上で、都市計画で定められた「容積率」の高いエリアに着目し、高層建築物が林立する街並みや、タワーマンション・大規模物件が多数存在するエリアを選ぶことが、資産価値向上に繋がる賢明な選択と言えるでしょう。これらの指標を複合的に考慮することで、あなたの不動産投資や住まい選びが、より確実な成功へと導かれるはずです。

参考文献

  • 国土交通省 住宅価格指数
  • Yahoo!ニュース(オリジナル記事のソースリンク)