米国がインドに課す50%の関税発効を目前に、インドのナレンドラ・モディ首相がドナルド・トランプ前米大統領からの電話を意図的に取らなかったと、海外メディアが報じました。ドイツ紙フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(FAZ)によると、トランプ氏は最近数週間にモディ首相との通話を4回以上試みたものの、いずれも応答がなかったとのことです。これは、米国へ輸出されるインド産商品に50%の関税が適用される直前の、トランプ氏による土壇場での交渉試みをモディ首相が拒否した形となります。日本経済新聞もまた、「モディ首相がトランプ大統領の電話を避けている」と報じ、インドに対するトランプ氏の不満が高まっている現状を伝えています。
「真の友」から「関税爆弾」へ:米印関係の変遷
かつてトランプ氏とモディ首相は互いを「真の友」と称し合う「ブロマンス」と表現されるほど友好的な関係を築いていました。しかし、トランプ氏がインドに対し「関税爆弾」を投下して以降、両者の関係には亀裂が生じ始めました。当初は農業市場開放を巡る意見の相違から始まった綱引きが、後にロシア産原油取引を巡る大きな衝突へと発展したのです。
ロシア産原油輸入問題と関税引き上げの経緯
ウクライナ戦争の終結を目指し、ロシアへの圧力を強めるトランプ氏は、インドに対しロシア産原油の輸入中止を要求しました。ウクライナ戦争以降、インドは1日平均約200万バレルものロシア産重質油を輸入しており、これはインド全体の石油輸入量の35〜40%に相当します。インドが原油輸入に対する姿勢を変えないでいると、トランプ氏は「ロシア産原油を買い続け、戦争資金を提供することは許さない」と強く非難。その結果、今月6日にはインドへの関税率を25%から50%へと倍増させる措置を取りました。これに対し、モディ首相は今月8日、「代償を払わなければならないことは分かっているが、準備はできている」と述べ、米国の関税圧力には屈しないと宣言し、強硬な姿勢を示しました。
ドナルド・トランプ前米大統領とインドのナレンドラ・モディ首相、米印関係の緊張を示す
インドの「反トランプ」戦略と新同盟関係
米国への強硬姿勢を明確にしたインドは、新たな外交戦略としてロシアや中国との接近を図り、「反トランプ」戦線を構築し始めています。今月8日にはブラジルのルラ大統領もモディ首相と電話会談を行い、トランプ政権の関税政策に対して共同で対応する必要があるとの認識を共有しました。ブラジルもまた、インドと同様に米国から50%の関税を適用されています。さらに、モディ首相は今月31日に中国・天津で開催される上海協力機構(SCO)首脳会議に出席し、中国の習近平国家主席との会談を予定しています。これは2018年以来、7年ぶりの中国訪問となり、インドの外交軸の変化を象徴する動きとして注目されています。
米印間の深い亀裂は、世界の政治・経済地図に新たな変化をもたらす可能性を秘めています。インドがロシア、中国、そしてブラジルといった国々と連携を深めることで、国際社会におけるパワーバランスにどのような影響を与えるのか、今後の動向が注目されます。
参照元:
https://news.yahoo.co.jp/articles/3703aaf39883cc7593ebd997f53c61d2d37088cd