ゴッホ美術館、「閉館の危機」を警告:作品保護に巨額の国家支援を要求

オランダ・アムステルダムにある世界的に有名なゴッホ美術館が、作品の保護と施設改修に必要な1億400万ユーロ(約178億円)の費用について、国家からの追加支援がなければ「閉館の危機」に直面するとの深刻な警告を発しました。フィンセント・ファン・ゴッホの膨大な作品群を収蔵し、年間数百万人が訪れるこの重要な文化施設は、財政的な岐路に立たされています。

1億400万ユーロの財政難と作品保護の緊急性

ゴッホ美術館は、オランダを代表する画家ビンセント・ファン・ゴッホの絵画200点以上、素描500点、そしてほぼ全ての書簡を収蔵する、世界で最も充実したコレクションを誇ります。これらの貴重な芸術作品の恒久的な保護に加え、来館者や職員の安全を確保するための大規模な改修費用が緊急に必要であると訴えています。開館から50年以上が経過した現在の建物は、もはやその目的に完全に適しているとは言えず、広範囲にわたる近代化と保全対策が不可欠となっています。この巨額の財政負担が、美術館全体を「閉館の危機」に追い込んでいると、同館は窮状を訴えています。

ゴッホ美術館館長が展示会「Choosing Vincent」で複製画の額縁を取り外す様子ゴッホ美術館館長が展示会「Choosing Vincent」で複製画の額縁を取り外す様子

オランダ政府と美術館の対立:法的手続きへ

この警告に対し、オランダ文化省は、法律に基づき必要な資金支援を美術館に提供しており、維持費としては十分な補助金がすでに交付されているとの見解を示しています。しかし、ゴッホ美術館側は、1962年にゴッホの甥ビンセント・ウィレム・ファン・ゴッホから作品群が寄贈された際の国家との合意に基づき、美術館の建設・維持には国の支援が継続されるべきであると主張。現在の補助金では大規模な保全・改修費用を賄いきれないとし、この合意の精神に基づいた追加資金提供を求めています。美術館はすでに補助金をめぐる法的手続きを開始しており、この争いを解決するための裁判は2026年2月に予定されています。

補助金増額要求と文化施設の役割

同美術館は、年間補助金を現在の850万ユーロ(約14億6000万円)から1100万ユーロ(約19億円)に引き上げる必要性を強調しています。ゴッホ美術館はオランダで最も人気のある文化施設の一つであり、2017年には過去最多の260万人が来館、1973年の開館以来、累計約5700万人もの人々が訪れています。収入の85%を入場料や民間パートナーシップに依存しており、これは多くの国立美術館と比較しても非常に高い割合です。この財政構造は自立性を高める一方で、大規模な資本投資が必要な際には国家支援への依存度を高めざるを得ない現状を示しており、国の重要な文化遺産を保護する上での国家の役割が改めて問われています。

ゴッホ美術館が直面するこの閉館の危機は、世界中の文化施設が抱える財政難と保全の課題を浮き彫りにしています。国家レベルでの文化支援のあり方、そして貴重な芸術遺産を次世代へと引き継ぐための持続可能な解決策が求められています。

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