中国における日本人への安全対策:抗日戦争勝利記念日を前に在中国日本大使館が警告

中国政府が「抗日戦争勝利記念日」と定める9月3日を目前に控え、在中国日本大使館は8月27日、在留邦人に向けて安全対策に関する異例の警告を発しました。この時期は中国国内で反日感情が高まりやすい傾向にあるため、日本大使館は、周囲に配慮した言動や周囲の状況への注意喚起など、具体的な安全確保策を強く呼びかけています。中国に滞在する日本人にとって、この情報は自身の身の安全を守る上で極めて重要であり、国際的な政治・社会情勢が個人の生活に与える影響を示すものです。

在中国日本大使館付近の北京の街並み。中国における日本人への安全対策が求められる背景を示す。在中国日本大使館付近の北京の街並み。中国における日本人への安全対策が求められる背景を示す。

中国における反日感情の高まりと日本大使館の警告

長年にわたり、中国では9月3日の「抗日戦争勝利記念日」に際し、抗日関連の映画やドラマの放映、各種記念イベントが全国各地で催されてきました。特に今年は、中国政府が「中国人民抗日戦争および世界反ファシズム戦争勝利80周年」という節目の年として位置づけており、例年以上に歴史認識に関連する愛国主義教育やプロパガンダが強化される可能性があります。このような背景から、在中国日本大使館は、反日感情が例年以上に高まる可能性を指摘し、在留邦人に対し「特に注意する必要がある」と警告しています。

大使館のウェブサイトでは、外出時の安全確保について具体的な指示が出されています。これには、不審者の接近など周囲の状況に常に警戒を怠らないこと、複数人での行動を心がけること、そして子供連れの場合は特に安全対策を徹底することなどが含まれます。こうした警告は、中国国内の政治的記念日が、在留外国人、特に日本人にとって潜在的なリスクとなり得る現実を浮き彫りにしています。

在留邦人が取るべき具体的な安全対策

在中国日本大使館は、在留邦人が自身の身を守るための具体的な行動指針を提示しています。これらは、日常生活における細心の注意を促すものであり、状況が悪化した場合のリスクを最小限に抑えることを目的としています。

  • 現地の人と接する際の言動・態度への配慮: 中国の人々と交流する際は、不必要に刺激するような言動や態度は避けるべきです。文化的な違いや政治的背景を理解し、尊重する姿勢が求められます。
  • 公共の場での日本語使用の制限: 外出時には、周囲に聞こえるような声量で日本語を話すことは極力控えるよう呼びかけられています。これは、日本人であることを示す行動が、思わぬトラブルに巻き込まれる原因となることを防ぐためです。
  • 日本人と推測される服装や物品の携帯回避: 一目で日本人とわかるような服装や、日本の国旗、日本語のロゴが入った物品の携帯は避けるべきです。目立たない行動を心がけることが、不必要な注目を浴びないための鍵となります。
  • 日本人利用施設の可能な限りの回避: 日本人が多く利用すると推測される場所(例えば、日本食レストランや日本人学校周辺、特定の商業施設など)は、この期間中は可能な限り避けることが推奨されます。
  • 不審な人物や集団への接近回避: 少しでも不審に感じる人物や、反日デモのような集団には絶対に近づかないでください。万が一遭遇した場合は、速やかにその場を離れ、安全な場所へ移動することが最優先です。

これらの対策は、個人の安全を確保するための予防的措置として、在留邦人一人ひとりが真剣に受け止めるべき重要なアドバイスです。

外務省も注意喚起:特に警戒すべき「注意日」リスト

在中国日本大使館の呼びかけに先立ち、日本の外務省も今月5日、ウェブサイトを通じて同様の注意喚喚起を行っています。外務省は、9月3日の「抗日戦争勝利記念日」を含む、特に注意が必要な複数の日付を具体的に挙げ、警戒を促しています。これらの日付は、日中間の歴史的な出来事に関連しており、中国国内で反日感情が高まりやすい傾向があります。

特に注意が必要な「注意日」として挙げられているのは以下の通りです。

  • 5月4日(1919年)五・四運動: 反帝国主義、反封建主義を掲げた学生運動。
  • 6月5日(1941年)重慶爆撃記念日: 中国の戦時首都・重慶への日本軍による大規模爆撃。
  • 7月7日(1937年)盧溝橋事件※: 日中戦争勃発のきっかけとなった事件。
  • 8月15日(1945年)終戦の日: 日本がポツダム宣言を受諾し降伏した日。
  • 9月3日(1945年)「抗日戦争勝利記念日」※: 中国が対日戦勝を記念する日。
  • 9月11日(2012年)尖閣諸島の取得・保有: 日本政府による尖閣諸島国有化の動き。
  • 9月18日(1931年)柳条湖事件(満州事変)※: 満州事変の発端となった事件。
  • 11月21日(1894年)「旅順虐殺」: 日清戦争中の旅順における出来事。
  • 12月13日(1937年)「南京事件」※: 中国が「南京大虐殺犠牲者国家追悼日」と呼称する日。

(※印は外務省が「特に注意が必要な日」としている)

これらの日付は、中国国内で大規模なイベントや報道、教育活動が展開されやすく、それに伴い反日感情が顕在化するリスクが高まります。在留邦人は、これらの日付を認識し、前述の安全対策をより一層強化することが求められます。

結論

在中国日本大使館および日本の外務省からの度重なる警告は、中国における在留邦人の安全確保が喫緊の課題であることを示しています。特に「抗日戦争勝利記念日」である9月3日や、その他の歴史的に重要な「注意日」においては、反日感情の高まりに備え、慎重な行動が不可欠です。在留邦人は、周囲の状況に細心の注意を払い、可能な限り複数人で行動し、目立つ行動を避けるなどの具体的な対策を徹底することで、自身の身の安全を守るよう強く推奨されます。日中関係の複雑な側面が露呈する時期だからこそ、冷静かつ的確な情報収集と対応が求められるでしょう。

参考資料

  • 在中国日本国大使館ウェブサイト
  • 外務省海外安全情報ウェブサイト