迷走が指摘されてきた石丸伸二氏(43)が、自らの政治的「原点回帰」を果たすことになった。「再生の道」の代表を務めていた石丸氏は、6月の東京都議選と先の参院選で全敗を喫した後、8月27日の記者会見で9月16日付けでの代表辞任を発表した。一見すると選挙での惨敗を受け入れた「引責辞任」のように捉えられがちだが、関係者によれば、これはかねてからの既定路線であったという。この決定の背景には、石丸氏がこれまで構築してきた独自のメディア戦略と、今後の政治活動への深い思惑が隠されている。
石丸伸二氏が「再生の道」代表辞任を発表した記者会見で、メディアへの強い姿勢を示す様子
記者会見で「オールドメディア」に猛反発
石丸氏は会見開始の10分前からエンジン全開で、自身の去就に関する記事に対し、複数のメディアへの不満を露わにした。特に標的となったのは朝日新聞で、同紙の「石丸伸二氏が再生の道代表辞任へ、都議選と参院選で全敗」という見出しについて、「最後の一文、どういう気持ちでつけられたのか」「(引責辞任の)印象を与えてますよね」と詰問した。石丸氏の主張では、代表辞任は選挙結果に関わらず以前から予定されていたものであり、朝日の報道は「引責」を連想させる「サゲ記事」だと受け止めているようだった。
さらに、日本経済新聞の電子版に掲載された自身の「目をつぶった写真」についても、「悪意がある」と強く主張した。これもまた、目をつぶる写真が「失態」を連想させる「サゲ記事」であるとの認識を示した発言である。この石丸氏の姿勢に対し、全国紙の政治担当記者は「まさか写真にまで噛みついてくるとは驚きだ。新聞社もある程度の配慮はしており、訃報記事で笑顔の写真は使わないなど、一般的な常識は存在する。石丸氏の言い分を全て聞いていたら、いちいち写真の選定について『これでどうでしょうか?』と伺いを立てることになり、そんなことをするマスコミはいない」と困惑を示している。石丸氏が特に「オールドメディア」に敵意を向けるのは、今に始まったことではなく、むしろ彼の「本来の姿」と言える。
「石丸構文」を駆使したメディア戦略の功罪
石丸氏がメディアに強い態度を示すのは、彼がこれまで築き上げてきた政治キャリアと深く結びついている。昨年7月の東京都知事選では、既存の巨大メディアを含む「既得権益打破」を強く訴え、小池百合子都知事に次ぐ165万票という驚異的な得票数を記録した。選挙後もテレビ番組に出演し、報道姿勢に疑問を投げかけたり、時に「石丸構文」と呼ばれる独自の論法を駆使して相手を押し切る場面も見られた。
政治評論家の有馬晴海氏は、石丸氏の手腕を次のように分析する。「人口約2万6000人の安芸高田市長が都知事選で165万票を獲得するのは、従来の常識では考えられない現象です。それが可能になったのは、ひとえに石丸氏の持つSNS拡散力でした。市長時代から市議を『口撃』する姿がネット上で大きな話題となり、今回の会見でもオールドメディアに対する厳格な対応が再び注目を集めるなど、メディアを巧みに利用する術を知っているのでしょう。ただし、SNSでは都合の良い部分だけを『切り取る』ことができますが、記者会見は全てが公に放送されてしまう。この点がネットとは異なり、石丸氏に対して『嫌悪感』を抱く人が増える可能性もありますね」。有馬氏の指摘は、石丸氏がメディアを「利用」し、同時にメディアに「利用される」という、ある種の「共依存」の関係を築いていることを示唆している。
東京新聞記者との「怪獣大戦争」:共依存の関係性
今回の記者会見のハイライトの一つは、東京新聞の望月衣塑子記者と石丸氏の間で繰り広げられた激しい論戦だった。望月記者が石丸氏の高圧的な姿勢に苦言を呈したことで、両者の主張は平行線をたどるものの、この「バトル」はネット上でも大いにバズった。ある記者はその様子を「怪獣大戦争が始まった」と表現し、会場の固唾をのむ雰囲気を伝えている。望月記者のような好戦的なタイプは、石丸氏にとってはまさに「待っていました」という相手であり、互いに「引き」合う相性の良さがあると言えるだろう。途中で離席した望月記者に対し、石丸氏が「またよかったらお越しください」と語った言葉は、本心から出たものだと解釈できる。
メディア側も、常に話題性を提供する石丸氏を無視することは商業的に困難だ。都議選、参院選での敗北により、一時は「オワコン化」も囁かれた石丸氏だが、今回の会見でのメディアとの「やり取り」を通じて、再び自分のフォームを取り戻し、文字通り「再生の道」を見つけた格好だ。
最終目標とされている3年後の東京都知事選まで、石丸氏とメディアとの間のこの「共依存」の関係性がどのように進化していくのか、引き続き注目が集まる。
参考文献
- 朝日新聞デジタル. 「石丸伸二氏が再生の道代表辞任へ、都議選と参院選で全敗」 (言及された記事内容に基づき)
- 日本経済新聞電子版. (言及された記事内容に基づき)
- FRIDAYデジタル. 「石丸伸二氏『再生の道』代表辞任へ 会見で記者と“やり合った”ワケ」. Yahoo!ニュースより.
- 有馬晴海氏の政治評論 (記事内で引用された見解に基づき)