米国務省は29日、9月にニューヨークで開かれる国連総会にパレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長らが出席するためのビザ(査証)発給を拒否すると発表しました。この決定は、国連総会でパレスチナを国家として承認する動きが広がる中で、アッバス議長による「独立宣言」を阻止する狙いがあるとみられています。米国による高官へのビザ発給拒否は過去にも混乱を招いたことがあり、今回も総会の開催に影響が及ぶ可能性が指摘されています。
国連本部協定と米国の義務
米国は1947年に国連と「国連本部協定」を締結しており、ニューヨークの国連本部を目的地とする各国の代表に対し、「移動に障害を加えてはならない。ビザが必要な場合は迅速に発給されなければならない」と明記されています。この協定は、米国と関係が悪化している国であってもビザ発給を義務付けています。ドゥジャリク国連事務総長報道官は29日、米国の決定に対し「国連本部協定を読むべきだ」と述べ、国務省と協議する意向を示しました。
米国がビザ発給を拒否したパレスチナ自治政府のアッバス議長(2024年9月、ニューヨーク)
安全保障上の懸念と過去の事例
米国は、今回のビザ発給拒否の理由として、パレスチナが「テロを扇動している」と主張し、安全保障上の観点から決定したと説明しています。過去にも米国がロシアやイランなどの代表に対し、ビザ発給を制限した事例があります。特に1988年には、パレスチナ解放機構(PLO)のヤーセル・アラファト議長(当時)へのビザ発給を拒否し、同年の国連総会の一部がジュネーブで開催される事態に至りました。
トランプ政権の思惑とパレスチナ側の反発
米ニュースサイト「アクシオス」は関係筋の情報として、9月23日に始まる国連総会の一般討論演説でアッバス議長が「パレスチナの独立」を宣言することを、トランプ政権が阻止しようとしていると報じています。また、国連総会に合わせてイギリス、フランス、カナダなどがパレスチナ国家の承認を行う方針を表明していることも、トランプ政権の判断に影響を与えた可能性が高いとみられています。パレスチナ通信によると、パレスチナ自治政府は声明を発表し、今回の発給拒否は「国際法および国連本部協定に明白に違反する」と強く非難し、決定の撤回を求めています。
今回のビザ発給拒否は、パレスチナの国家承認を巡る国際社会の動きと、米国の外交政策が複雑に絡み合う問題として、今後の国連総会の展開に大きな影響を与えることが予想されます。