北朝鮮、露クルスク州への派兵を「英雄視」:自爆称賛プロパガンダと連携深化

北朝鮮の朝鮮中央テレビは、ロシア軍を支援するため露西部クルスク州へ派遣された自国兵士らを繰り返し称賛する番組を放送している。特に8月31日の放送では、兵士らの自爆死を「英雄的な犠牲精神」だと紹介。現地でのウクライナ軍との激しい戦闘で多数の死傷者が出たとされる中、戦死者の顕彰式も報じることで、国民の愛国心を鼓舞するプロパガンダの意図が明確にうかがえる。

クルスク派兵の経緯と「英雄的行為」の喧伝

北朝鮮は、ウクライナ侵攻を続けるロシア軍を支援するため、ウクライナ軍が越境作戦を進めたクルスク州へ派兵を決定した。朝鮮中央テレビの報道によると、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記が派兵を決めたのは2024年8月28日であり、北朝鮮軍の派遣部隊は同年10月にはクルスクでの戦闘に加わったとされている。

今年8月31日に放送された番組では、戦場で戦う北朝鮮兵の様子を多数の映像で紹介し、戦死者らの「英雄ぶり」を強調した。具体例として、地雷除去の任務を帯び、戦闘が始まると「地雷原を走りながら(味方の)通路を切り開き、壮烈に戦死」した20歳の兵士の物語が伝えられた。

また、別の20歳と19歳の兵士については、「戦友の遺体を運び出す際、重傷を負って敵に包囲されるや、お互いに抱き合って手投げ弾で勇敢に自爆した」と報じられた。さらに、12人の小隊が敵陣地で「偉大なる祖国よ、繁栄せよ!」と叫びながら自爆した事例も詳細に伝えられており、これらの描写は、国家への献身と犠牲を称えるプロパガンダの中核をなしている。

露朝関係の深化と国際情勢への示唆

金総書記が参戦を決定した同年8月28日に先立ち、プーチン露大統領と金総書記は、2024年6月19日に有事の軍事援助などを規定する「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結していた。ウクライナ軍によるクルスク州への越境攻撃が同年8月上旬に始まっていた事実を鑑みると、北朝鮮は条約締結後、極めて短期間で参戦を決断したことになる。

今回の北朝鮮によるクルスク派兵とその「英雄的犠牲」の喧伝は、ウクライナ紛争への直接的な介入であり、露朝間の軍事・政治的連携の急速な深化を強く示唆している。国際社会は、この新たな動きがウクライナ紛争の長期化と国際安全保障に与える影響を注視する必要がある。

参照元

https://news.yahoo.co.jp/articles/626df77e46900ea264c5da60d9ba6f3b11fdbf0e