東京都墨田区の横網町公園で1日に開催された「関東大震災朝鮮人虐殺102年犠牲者追悼式」において、東京朝鮮人強制連行真相調査団の西澤清代表は、小池百合子東京都知事が追悼文送付を9年連続で拒否したことに対し、強い批判の声を上げました。この式典は、1923年の関東大震災の混乱の中で無実の朝鮮人が虐殺された悲劇を記憶し、真実の究明を求める重要な場であり、都知事の態度は歴史認識と責任を巡る議論を再び浮上させています。
小池都知事の姿勢と批判の焦点
西澤清代表は、小池都知事の追悼文拒否について「朝鮮人犠牲者を軽視する態度は許されない」と強く非難しました。歴代の都知事が追悼文を送付してきた歴史があるにもかかわらず、小池都知事は2017年の就任翌年から一貫して拒否を続けており、今年で9年目となります。都知事の表面的な理由は、同公園内の慰霊堂で行われる関東大震災犠牲者追悼行事には追悼文を送っているため、朝鮮人虐殺犠牲者に対して別途送る必要はないというものです。しかし、これは自然災害による犠牲者と、デマを口実に殺害された朝鮮人犠牲者の被害の性質が全く異なるため、多くの批判を浴びています。小池都知事は、関東大震災の朝鮮人虐殺事件について「それぞれが研究されている」との認識を示し、事実としての虐殺を認める姿勢を見せていません。
歴史の責任と現代社会への警鐘
追悼式の主催者の一人である西澤代表自身も、関東大震災で日本人の曽祖母、祖母、叔父を亡くし、その遺骨が慰霊堂に安置されています。その上で西澤代表は、「小池知事は日本人犠牲者のための大法要に出席したが、亡くなった私の家族は『私たちはもういいから、もっとひどいことをされた人たち(朝鮮人)の方に行ってあげてください』と言ったはずだ」と述べ、都知事の姿勢が現代の日本の外国人嫌悪や「日本人ファースト」といった主張に繋がっていると警鐘を鳴らしました。
関東大震災朝鮮人虐殺102年追悼式で、西澤清代表が小池都知事の対応を批判し追悼の辞を述べる様子
関東大震災朝鮮人虐殺の背景と現在
関東大震災朝鮮人虐殺は、1923年9月1日の大地震の混乱に乗じて「朝鮮人が井戸に毒を入れた」といった根拠のないデマが拡散され、日本の軍、警察、自警団が数千人もの罪のない朝鮮人などを殺害した事件です。日朝協会東京都連合会などが1974年以来、横網町公園の一角に追悼碑を建立し、毎年犠牲者を追悼する活動を続けています。しかし、日本政府は「政府として調査した限り、事実関係を把握することのできる記録が見当たらない」として、朝鮮人虐殺への責任を回避する姿勢を続けています。これに同調する一部の極右勢力は、今年も追悼式会場周辺でヘイトデモを行い、歴史修正主義的な動きが現在も進行しています。
真相究明に向けた動きと今後の展望
このような状況の中、今年はわずかながらも進展が見られました。今年2月に結成された「関東大震災朝鮮人虐殺を検証する有志議員の会」が先月、石破茂首相ら日本政府に対し、真相究明を求める要請書を提出しました。彼らは「政府の態度は少しずつ変化しつつあると思う」と述べ、今後の進展に期待を寄せています。また、朝鮮人虐殺が起きた埼玉県の知事が4日に、千葉県の知事が7日にそれぞれ開催される朝鮮人犠牲者追悼式に追悼文を送付するなど、地方自治体レベルでの認識の変化も見て取れます。
結論
関東大震災朝鮮人虐殺102年目の追悼式は、単なる過去の出来事を記憶するだけでなく、現代社会における歴史認識、差別、そして政治的責任の問題を浮き彫りにしました。小池都知事の追悼文拒否は批判を集める一方で、有志議員の会や他県の知事の動きは、真相究明と歴史の直視に向けた希望の兆しを示しています。真実に基づいた公正な歴史認識の確立は、未来に向けた和解と共生社会を築く上で不可欠であり、今後も国内外からの継続的な関心と働きかけが求められます。
参考文献
- ホン・ソクジェ特派員 (2025年9月2日). 小池都知事の追悼文拒否に西澤代表「朝鮮人犠牲者を軽視する態度は許されない」. ハンギョレ. https://news.yahoo.co.jp/articles/b665db4f622a21b19dc524b932f3546fc2679acd
- 関東大震災朝鮮人虐殺を検証する有志議員の会. (202X年). 活動報告.
- 日朝協会東京都連合会. (202X年). 横網町公園追悼碑について.