イワタニ「ホームシェフプレート」4.4万円でも完売!家庭で本格鉄板焼きを実現する秘訣

カセットコンロをはじめとする調理器具で知られる岩谷産業(イワタニ、大阪市)が、新たな鉄板焼きプレート「ホームシェフプレート」(希望小売価格4万4000円)を2024年7月29日に発売しました。この商品は、発売に先駆けて応援購入サービス「Makuake(マクアケ)」で先行販売され、わずか1カ月半で1200万円を超える売り上げ(275枚)を達成し、大きな注目を集めました。高額ながらも消費者の心を掴んだ「ホームシェフプレート」は、一体どのような魅力と価値を提供しているのでしょうか。本記事では、その驚異的な人気の背景と、家庭で本格的な鉄板焼きを楽しむための革新的な機能を深掘りします。

「ホームシェフプレート」の際立つ特長:プロ級の仕上がりを家庭で

「ホームシェフプレート」が実現する本格的な鉄板料理の秘密は、その革新的な素材と設計にあります。最大の特徴は、均熱性、熱伝導性、蓄熱性に優れた「アルミクラッド三層鋼」を採用している点です。これにより、プレート全体が均一に温まり、食材を置いても温度が下がりにくく、気になる焼きムラが起きにくいという利点があります。家庭でも約5分間の予熱で本格的な調理を始めることができ、手軽にプロのような仕上がりを楽しめます。

表面には耐久性の高いステンレスが使われているため、金属製のナイフやヘラの使用が可能です。これにより、家庭での実用性が飛躍的に向上しました。また、食器用洗剤による丸洗いに対応しているため、メンテナンスが非常に簡単で衛生的です。さらに、重さは約2.8キロと、従来の鉄製プレートの約半分に抑えられており、取り扱いやすさも追求されています。

イワタニの新作「ホームシェフプレート」で調理を楽しむ様子。カセットコンロ「焼き上手さん」にセットされ、肉や野菜が均一に焼かれている。イワタニの新作「ホームシェフプレート」で調理を楽しむ様子。カセットコンロ「焼き上手さん」にセットされ、肉や野菜が均一に焼かれている。

長年の実績を誇る「焼き上手さん」シリーズとの連携

「ホームシェフプレート」は、イワタニが誇るカセットガス式ホットプレート「焼き上手さん」シリーズ専用のプレートとして開発されました。この「焼き上手さん」シリーズは、これまでに約39万台もの販売実績を持ち、多くの家庭で愛用されてきた信頼性の高い製品です。

ガス直火ならではの本格的な火力で料理が楽しめることに加え、電源が不要なため、庭先やアウトドアなど、場所を選ばずに気軽に使える点が大きな魅力です。現在、「ベータ」(公式ECサイト価格:1万4100円)、フッ素加工を施した「ベータプラス」(同1万6500円)といったモデルが展開されており、その汎用性の高さが支持されています。既存の「焼き上手さん」シリーズにも大型プレートは付属していますが、さらなる本格志向に応えるべく、別売りの「ホームシェフプレート」が開発されるに至りました。

イワタニ「ホームシェフプレート」のクローズアップ画像。アルミクラッド三層鋼による均一な加熱と、軽量で手入れが簡単な特徴がうかがえる。イワタニ「ホームシェフプレート」のクローズアップ画像。アルミクラッド三層鋼による均一な加熱と、軽量で手入れが簡単な特徴がうかがえる。

開発秘話:直面した課題といかに乗り越えたか

「ホームシェフプレート」の開発構想が始まった2022年当時、世界はコロナ禍にあり、キャンプや家庭料理への関心が高まっていました。イワタニのマーケティング部長である本山孝祐さんは、「ガス火の特徴を生かし、本格的な鉄板料理を自宅で楽しめるという提供価値を追求した」と語ります。プロ仕様の調理道具を家庭で使えるようにすることをコンセプトに進められましたが、道のりは平坦ではありませんでした。素材の選定、安全性、そしてデザインの再現性において、いくつもの課題に直面しました。

当初、同社は鉄製プレートを検討しましたが、厚みを増すと「焼き上手さん」シリーズの耐荷重(食材込みで5キロ)を超えてしまい、薄くすると焼きムラが発生するというジレンマに陥りました。さらに、四角い形状では製造過程でゆがみが生じやすく、試作を繰り返す日々が続きました。マーケティング部新商品開発担当の山崎すみれさんは、「なかなかうまくいかず、開発自体がストップしそうになった」と当時の苦労を振り返っています。

この困難を乗り越える転機となったのが、「アルミクラッド三層鋼」の採用でした。アルミニウムの高い熱伝導性と、ステンレスの優れた耐久性・保温性を組み合わせたこの革新的な構造は、プレート全体を均一に加熱することを可能にし、焼きムラの問題を見事に解消しました。加えて、重量も鉄製の約半分に抑えることに成功し、取り扱いの容易さも実現しました。

「ホームシェフプレート」は、コロナ禍で高まった「おうち時間」の充実というニーズに応え、技術的な困難を粘り強く克服することで誕生した製品です。

結論

イワタニの「ホームシェフプレート」は、Makuakeでの圧倒的な成功を足がかりに、高価格帯でありながらも市場に受け入れられました。その人気の秘訣は、均一な加熱を可能にする「アルミクラッド三層鋼」という革新的な素材と技術、そして耐久性とメンテナンス性を兼ね備えた実用的な設計にあります。さらに、長年愛されてきた「焼き上手さん」シリーズとの互換性も、ユーザーにとって大きな魅力となっています。

開発過程での数々の課題を克服し、消費者の「家庭で本格的な鉄板料理を楽しみたい」という潜在的なニーズを見事に形にしたこの製品は、単なる調理器具以上の価値、すなわち「豊かな食体験」を提供しています。今後も「ホームシェフプレート」は、日本の家庭料理のシーンに新たな風を吹き込むことでしょう。


参考文献