ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、中国・天津で開催された上海協力機構(SCO)首脳会議において、ウクライナでの戦争終結についてアメリカのドナルド・トランプ前大統領と「了解」に達したと発言しました。プーチン大統領は、8月15日に米アラスカ州で行われたトランプ氏との会談で得られたこの「了解」が、ウクライナに平和をもたらす道を開くものと期待を表明。この発言は、ウクライナ危機の行方を巡る国際社会の動向に大きな影響を与えています。
上海協力機構(SCO)首脳会議で演説するプーチン大統領。ウクライナ戦争終結に関するトランプ氏との「了解」発言が注目された。
ロシア、ウクライナ紛争の起源と西側への主張
プーチン大統領はSCO首脳会議の演説で、ウクライナ紛争の起源に関する自身の見解を改めて強調しました。同氏は、この危機はロシアの攻撃によって始まったのではなく、西側諸国が支援し挑発したウクライナでのクーデターが原因だと主張。さらに、西側が絶え間なくウクライナを北大西洋条約機構(NATO)に引き込もうとする動きも、戦争の要因であると指摘しています。
ロシアはウクライナのNATO加盟に一貫して反対していますが、西側諸国は、ウクライナでの戦争は西側の挑発が原因で始まったものではなく、ウクライナをNATOに引き込もうとしているというプーチン大統領の主張を繰り返し否定しています。この根本的な認識の食い違いが、和平交渉の進展を困難にしています。
中国・インドの役割と国際社会の視線
プーチン大統領は、ウクライナ危機の解決を促進しようとする中国とインドの取り組みと支援に対し、謝意を表明しました。同氏は天津で中国の習近平国家主席、インドのナレンドラ・モディ首相とそれぞれ個別に会談し、情勢について意見交換を行ったとみられます。
中国とインドは、ロシア産原油の大口購入国であり、西側諸国からは、戦争によって疲弊したロシア経済を支えていると批判されています。両国の外交的解決への支持と経済的な結びつきは、ロシアの戦争遂行能力への影響として国際社会の関心を集めています。
安全保障の枠組みと各国間の食い違い
アラスカでの首脳会談後、アメリカのスティーヴ・ウィトコフ大統領特使は、プーチン大統領が将来的な和平合意の一環として、ウクライナの安全を保証するため、NATO条約第5条のような集団安全保障の枠組み構築に同意したと発言しました。しかし、ロシア側はこの合意を公式には認めていません。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、欧州がウクライナに提供する安全の保証について近く文書化されると期待を表明しています。これに対しロシアは8月末、西側の提案は「一方的で、明らかにロシア封じ込めを意図して設計されている」と批判し、これが実施されればウクライナは「戦略的な扇動者」になるとの見解を示しました。これらの発言は、安全保障の枠組みに関する各国の立場の隔たりを浮き彫りにしています。
ウクライナ情勢の最新動向と和平への道
プーチン大統領の発言があった間も、ロシアによるウクライナ攻撃は継続されています。8月28日には首都キーウで子供4人を含む少なくとも23人が死亡したとウクライナ当局が発表しました。市内にある欧州連合(EU)代表部の建物も被害を受け、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は強い怒りを表明。これを受け、ドイツとフランスは、戦闘終了に合意するようロシアへの圧力を強める方針を示しています。
他方、ゼレンスキー大統領は8月29日、ロシアとの和平のためにウクライナ軍とロシア軍の間に緩衝地帯を設けるという案を否定しました。同氏は記者団に対し、「緩衝地帯を提案するのは、今の戦争の技術的な状態を理解していない者だけだ」と述べ、ドローン攻撃の脅威によって、前線付近にはすでに事実上の緩衝地帯が存在しているとの考えを示しました。外交的解決と軍事的な緊張が絡み合い、和平への道のりは不透明さを増しています。
結論
プーチン大統領のトランプ氏との「了解」発言は和平への期待を呼ぶ一方で、ロシアと西側諸国、ウクライナの間には依然として深い溝が存在します。紛争の起源や安全保障の枠組み、和平プロセスに関する各国の見解の相違、そして厳しさを増す戦況を鑑みると、持続可能な平和には国際社会の多角的な外交努力が不可欠です。
(c) BBC News
Source link